瞬殺(殺してはいない)
『ヴォオオオオ!!!』
拳を振り上げ、私に向かってそれを振り下ろす。随分とのろまな攻撃だったので軽やかに避けたが、地面に当たるとそこにクレーターができた。
当たっても骨は砕けないくらいかな〜。
「……ん?」
遅いが重い攻撃を避けていたけれど、どこか不自然だ……。そう思った時、曲がり角から女の子が現れた。
ひったくり犯は『待っていた』と言わんばかりの満面の笑みを浮かべ、女の子めがけて一直線に走り出し、手を伸ばす。
『ハッ! コレデ人質ハ……ア?』
「はぁぁぁ……」
男が女の子を捕まえる前に、私が一瞬で移動して助けたのだ。
「気絶程度で済ませようとしてたのに……。残念だね、おじさん」
ゴキゴキと手を鳴らし、男に近づく。
「私は基本的に怒らない。でもライトが怒ることをする奴は容赦なく潰すつもりなの……。今しようとしたのはライトの逆鱗に触れる行いだった……」
『待、待テ……近寄ルナ!!』
「…………」
『ッ!!』
ギロリと男を睨むや否や、最後の一撃だろう拳の攻撃を私に繰り出してくる。
私も握り拳を作り、男の手に拳を振るうと、枯れ枝のようにポキッと何かが折れる音がした。
『ウガァァアア!!』
「もしその血が本物だったとしても私には勝てないよ」
そしてもう一度拳を振り上げ――
「――私が本物だから」
それを振るった。
手加減して殴ったから体に風穴は開かなかったけれど、数十メートルぶっ飛んで気絶したみたいだった。
呆気なくて、瞬殺だったなぁ。
「ライトのとこ持ってって褒めてもらお〜!」
男をずりずりと引きずり回しながら、私はライトの元へ向かうのであった。
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