ひったくり事件

「ゔっ……きぼちわるいぃ……。頭が割れそう……」


 寝起きの開口一番にそんなことを言いながら起き上がる。頭はガンガンと痛み、吐き気がする。

 昨日はみんなに煽られてついつい飲みすぎてしまった。


「次からはもっと温厚に……いや、でも身長を馬鹿にされるのはカチンとなっちゃうんだよなぁ……」


 ミアはまだ僕の隣でスヤスヤと寝息を立てている。気分が悪いが、今日は王都に行くために色々と買い物に行きたいのだ。


「ミア起きてー。今日はお買い物行くよー」

「んんん……あぃ……」


 ようやく服にも慣れてきたようで、脱がずに眠っていた。……けど、服が乱れてて色々と危ないからやっぱり竜の姿で寝ておいて欲しい。

 そんな悩みは一旦置いておき、僕とミアは部屋の外に出た。


「ライトくんにミアちゃんおっはよ〜。ライトくんは飲みすぎだねぇ」

「はい……」


 アーリャさんが僕のほうに手をかざしながらそう言うと、僕の体の周りがキラキラと輝き始めた。

 これはアーリャさんのスキルらしいが、詳しくは聞かせてくれない。兎にも角にも、これで気持ち悪さもなくなるからありがたい。


「ありがとうございます、アーリャさん」

「いいってことよ。今日は何か予定でもあるのかな?」

「はい。数日後に冒険者ランクをアップさせるために王都に行くので、そのための買い物に行こうかと」

「おおっ! あの貧弱ライトくんがとーとー成長か。いや〜、時が流れるのは早いねぇ」


 椅子に座ると、朝食を出してくれた。ミアは目を閉じながら朝食を口に詰めていた。


「あ、そーいえばだけどさ、最近この街でひったくりが多発してるらしいよ?」

「ひったくりですか? 騎士さんにすぐ捕まるんじゃ?」

「それが捕まらないんだよ。そいつらは二人組で、一人はすんごく足が速いやつで、もう一人は姿を消せるスキルを持つ奴らなんだ。なかなか手こずってるらしいよ〜?」

「そうなんですね……。気をつけます!」


 朝食を食べた後は、ミアをちゃんと起こして外に出た。

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