トカゲだと思って育てていたのは邪竜でした
海夏世もみじ
卵から育てたトカゲは竜でした
僕の名前はライト。Eランク冒険者で、薬草採取が得意な貧弱冒険者だ。ミルクティー色の髪で琥珀色の瞳をしているけれど、童顔で身長が低いことがコンプレックス。
そんな僕は、街の外の草原で薬草採取をしていたのだが……
『グルァァアアィアアアアァァ!!!』
「ひぃ〜〜!!」
ここいらでは滅多に現れないブラッディオーガというAランクの魔物に追われて命の危機。
角を生やし、真っ赤な体にゴリゴリマッチョの体、10メートルはあるであろう巨体に棍棒を持っている魔物だ。
『ぴー! ぴー!』
「み、ミア! 出てきたらダメだよ! 筋骨隆々のマッチョ魔物に殺されちゃうから!!」
僕の胸ポケットから顔を出すこの子。黒い鱗を持ち、宝石のように綺麗な青い瞳を持つトカゲだ。
僕が幼い時、『死、蔓延る樹海』という物騒な森で卵を見つけたのだが、放棄されていたようなので持ち帰った孵化させたのがこのミアだ。
そんなミアを連れて家を出て、冒険者として働き始めたのはいいが、魔法も剣術もできない僕はEランク冒険者止まりだ。
代わりと言ってはなんだけれど、家事全般や、魔物とか人を解析するのは得意。後逃げ足は速い。
……と、走馬灯やらを解析している場合ではない。
超ピンチ! だいぶ森の方まで近づいてしまったから、街までの距離が遠い。
「ひぃ、ひぃ! 唸れ! もやしっ子の体力!!」
息を切らしながら全力疾走をする。
『グォオオ!!!』
耳を穿つような雄叫びを上げるオーガ。後ろを振り向くと全身から煙を出していている。
「確かブラッディオーガの固有スキル――【
【赫灼血流】は、短時間の間だけ全身の身体能力をあげるオーガ特有のスキルだ。
今まではなんとか互角の足の速さだったけれど、それを使われたら一瞬で距離が縮められてしまう。
そう思った頃には、もう遅かった。
『ヴオオォーッ!!』
「あ――」
オーガの拳が、僕の背中に直撃していた。
バキバキと骨が折れる音が聞こえる頃には、僕は地面に血を吐きながら倒れていた。
「ゲホッ……えほ……」
若干体をひねって躱したつもりだったけれど、威力が高すぎて無理……。
地面に横たわりながら、意識が薄れて行くのを感じることしかできない。
『みー!』
「あぁ……ミア……」
心配した様子で僕の頰にスリスリと頭を擦り付ける。他の冒険者は遠征に行っていて、救助は期待できないな。
――ズン……ズン……
オーガの足音が近づいている。
「短い人生……だったなぁ……」
もはや手詰まりだと思い、僕は諦め混じりの息を吐いた。
――だが、ミアの様子がおかしい。
なんかプルプル震えてるし、体に亀裂が入ってそこが輝き始めてる。唸り声をあげていて、普通じゃないことは確かだ。
「み、みあ……?」
ミアの名前を呼んだその瞬間、閃光に包まれてあたりが一瞬真っ白になる。
だがそれも束の間。真っ白になったと思って、次に目を開けると目の前は真っ黒だった。
「……? これは……鱗?」
ペタペタと触ってみると、金属より硬いんじゃないかと思うくらいの強度だ。それが板のように何枚もあって張り付いているような……。
恐る恐る、僕は見上げる。
『ガァァァ…………』
「んんっ!?」
いたはずのミアの代わりに、漆黒の翼にゴツゴツのい鱗を持ち、巨大な角、鼻息で吹き飛びそうなぐらいの巨体のドラゴンがそこにいた。
青い瞳に、同じく青い模様の入る漆黒の体を持つ竜まるでおとぎ話などに出てくる――〝邪竜〟かのような佇まいだった。
【後書き】
初心を思い出して書いてみました!
毎日投稿を頑張ります!(するとは言っていない。だがしかし頑張る)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます