18 エクリエル王国へ

俺達は宿屋に戻った後、とある事を皆に提案する。


「人数が増えてクエスト報酬も手に入った事だし、皆が個別で休める部屋を借りようと思っているけど、その方がいいよね?」

「私は同じ部屋でも問題ないにゃ! それに、部屋を借りるのはお金がもったいにゃいし!」


キャスティはいち早く手と猫耳をピンと立たせて意思表明をする。


「あ、お金の心配ならしなくていいよ。それに今日は皆で洞窟の探索をして疲れも溜まっているだろうから、昨日みたいに床で寝るのは良くないと思うんだ」

「た、確かに……そ、そうなのにゃ……」


キャスティの猫耳は徐々にしぼんでいった。


「……そうね。さすがに私も今日はちょっと疲れちゃったし、ゆっくり休みたいわ」


エレナも俺と同意のようだった。


「分かりました! それでは部屋割りですが……キャスティさんとエレナさん、私とディアマトさんでいいでしょうか?」

「うん、いいんじゃないかな」

「エアリアと同じ部屋かの。よろしく頼むのじゃ!」

「私はエレナさんと一緒にゃ! やったにゃ!」

「えぇ、よろしくねキャスティ。……って言っても寝るだけなんだけど」

「……あと明日、俺達はエクリエル王国までディアマトに乗って移動すると思うんだけど、そうなると馬車を置いていく事になるんだよね。……馬車はどうしよっか?」

「確かに……誰か預かってもらえる人がいればいいんですが」

「そうだね……ちょっと宿屋の亭主に部屋を借りるついでに聞いてみるよ」

「わかりましたアモンさん。お願いできますか?」

「まかせて」


話は決まったようで、俺は部屋から出て宿屋の亭主のいる場所へと移動した。


「すみません。あと2つ部屋を借りたいんですけど、いいでしょうか?」

「あぁ、あんたかい。構わないよ。ちょっと待ってくれ、鍵を用意する」


俺は鍵を用意する亭主に続けて確認を取る。


「……あと、今置かせて貰っている馬車なんですけど、明日別の乗り物で遠出をする事が決まりまして、馬車をこの宿屋に一時的に置かせてもらえないでしょうか?」

「あぁ、あの馬車をかい? 問題ないよ、いつまでも置いておくといいさ」

「いいんですか! あ、戻ってくるまで自由に使って頂いて構わないのでよろしくお願いします」

「わかったよ。それと……ほら、部屋の鍵だよ」

「ありがとうございます。それでは」

「はいよ、ゆっくり休むと良い」


軽く宿屋の亭主に別れを告げ、部屋に戻る。


「おまたせ。はい、これが部屋の鍵だよ。これで今日は皆ベットでゆっくり休むといいよ」


俺はエアリアとエレナにそれぞれ1つずつ鍵を渡した。


「ありがとうございます、アモンさん」

「ありがとね、アモン」

「それじゃ、明日の朝には俺の部屋に集まって、最終確認をした後にエクリエル王国に向かおうか」

「そうですね。それでは私たちは失礼させてもらいます!」

「うん、また明日ね」


俺はエアリア達を部屋から出ていくのを確認した後、ベットに座り込み窓の外に広がる夜空を見上げながら妹の事を思い出す。


「アイネ……もうすぐだからな。もう少しの間、待っててくれ」


俺はそう言いながら体を休める為に、ベットに横になったのだった。




次の朝、目が覚めせて旅支度を済ませると俺の部屋に皆が集まってきた。


「おはよう、昨日はしっかり休むことは出来た?」

「はい、お陰様でしっかり休むことが出来ました!」

「えぇ、久しぶりにベットで寝た気がするわ。ずっと荷台か地面だったからね」

「私もにゃ! ふかふかベットで良かったにゃ!」

「そうじゃのぉ! 我もあんなにふかふかなベットなんて久しぶりだったぞ!」


ディアマトも満足そうに話していた。

このあどけない少女がドラゴンだなんて未だに信じられないな。


「ゆっくり休めたようで良かったよ。それで……出発の前に確認だけど、ディアマトの背中に乗って王国に行くと思うけど、移動中は風圧とかで飛ばされないのかな?」

「確かに風の勢いは大きいが、そんなに速度を出して飛ぶわけではないから安心すると良い。それに、主様のスキルで風は防ぐ事もできるじゃろう」


俺は言われてハッとなる。


「あ、そうか。……確かに、前方に空気の壁を作れば風圧も避ける事が出来るのか」


特に問題なさそうだったので、俺達は宿屋を後にしてメルトリアの外で移動した。




ディアマトは光り輝くと体のサイズが徐々に大きくなっていき、出会った時と同じようなドラゴンの状態へと変化する。


「……やっぱりデカいな」


ドラゴン化したディアマトは俺達を見下ろし、手を近づけてくる。


「主様、乗ってくれるかの」


未だに慣れないドラゴン状態のディアマトの手のひらに乗る。


「そ、それじゃお邪魔します」


すると、続けてエアリア達も乗ってくる。

皆が手のひらに乗り込むと手を肩辺りに持っていきディアマトの肩に飛び乗る。


「振り落とされないように注意するのじゃぞ?」

「あぁ、エクリエル王国までよろしく頼む!」

「まかせるのじゃ主様!」


ディアマトはそう言うと大きな翼を羽ばたかせ、徐々に空中に浮き始めていく。

そして、徐々に加速していきエクリエル王国へと向かっていった。


「……すごい景色だ」


俺はエアリア達が風圧で落ちないように空気の壁を四方に展開しつつ、眼前に広がる景色に驚く。


「アモンさん、すごいです! 白魔法で空を短時間だったら移動できますが、これほど高い場所から眺めたのは初めてです!」

「……そうね。山で見えなかった地平線が丸見えよ。世界ってこんなに広かったのね……っ!」

「すごいにゃ! すごいにゃ!」


エアリア達は風圧の抵抗を殆ど受けることなく景色を楽しんでいた。

非常にテンションが高く、移り変わる景色に釘付けの様子だ。


「楽しそうじゃのう! エクリエル王国までもうしばらく時間が掛かるからそれまで景色を楽しんでおくといいのじゃ!」

「あぁ! 頼むよディアマト!」


俺達はそれからも次々と移り変わる景色を楽しみながらエクリエル王国へと向かうのだった。




しばらく景色を楽しんでいるとディアマトが声をかけてくる。


「主様! エクリエル王国が見えてきたのじゃ!」

「本当か!」


俺は身を乗り出して前方を確認すると、遠くに微かに見えるお城とその周辺にある城下町が見えた。


「おぉ! あそこがエクリエル王国なんだね!」

「そうじゃ! あと少しで着くからもう少し待ってておくのじゃぞ!」


エアリア達の遠くにある城を確認する。


「わぁ! こんなにすぐ着くなんて驚きです!」

「まぁ、空を飛んでいるんだから早いのも無理はないわよね」

「お城だにゃ! アモンさん、あのお城に行きたいにゃ!」

「そうだね。ディアマト、あのお城まで向かってくれるかな? 直接王様に聞きたいこともあるし」

「わかったのじゃ!」


ディアマトはエクリエル王国のお城へ一直線に進んでいく。




――だがその時、異変が起きた。

急にお城全体に大きな魔法陣が展開され、次の瞬間大きな光線が俺達に飛んで来たのだ。

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