第16話 つるぎ温泉1

 積み込んだ石でズッシリ重くなった車に乗り込み、ヒスイ海岸を後にした私たち。ビンちゃんは平気な顔ですが、私は石運びで結構グッタリです。


 向かうは今晩のお宿。

上市町にある、つるぎ温泉の、私の定宿。


 ここのスゴイところは、何と言ってもお湯!

茶褐色というか、黒っぽい色の独特の温泉です。

 湯口で少し泡立ち、それは、まるでコーラの様。

コーラに浸かっているような不思議な気分になります。

…少しヌルッとしたお湯で、滑りますので、要注意。


 あ、あと、料理も凄いんです。

感動的に美味しい!

 元は公の年金施設か何かだったようで、少し古い感じですが、私はその辺りは気になりません。

 富山に泊まるなら、絶対ここと決めている御宿です。


 え? 宿の名前を教えろって?

 ナイショ!

 だって、御客が殺到したら、私が泊まれなくなっちゃうも~ん!


 太鼓演奏のお迎えを受けながら、フロントでチェックイン手続き。

部屋に入り、浴衣に着替え、温泉へレッツゴー!

エレベーターで一階へ。

 あ、ちなみに、フロントがあるのは二階。

玄関入ると二階に着くという、変な作りです。

 私のお部屋は四階ですね。

階段も有りますが、まあ、普通、エレベーター使いますよね。


 でも、ビンちゃん、エレベーターに乗ったの初めてだったようで、目を丸くしていました。

 あ、否、乗ったと言うと、ちょっと違うのかな?

もともと浮遊しているのですから。

 いきなり床が下がって、着いて行くのにタイムラグが出来、驚いたようです。


 大浴場の脱衣室。誰もいない無人状態。

よし、ラッキー!

 いそいそと浴衣を脱いで裸になる私を、ビンちゃん、ジッと見ています。


「改めて見ると、お前、綺麗な肌をしとるな。それに…」


 いやだ、そんなこと言われたの、初めて。

照れるじゃあないですか……。

 でも、「それに…」って、なんですか?


「股の毛も、金色なんだな」


「う、な、ナニ見てるんですか~!」


 私は、サッと両手で股間を隠しました。


 まったく、何を言い出すかと思いきや。

当り前じゃないですか。

髪の毛も眉毛も睫毛も金髪なんです。

アンダーだけ黒かったら変でしょうにっ!


「あ、いや、すまぬ。他意は無い。

キラキラして綺麗だなと思っただけだ」


 う~っ! その「綺麗だ」っての、反則です。

言われ慣れない言葉に、顔が赤くなる……。


 そんな事より、です。

昼間の温泉の時は、ビンちゃんは御湯の周りを浮遊して遊んでいました。

でも、私と一緒なら、ビンちゃんも温泉に入れるかもしれないのです。

私が触れた物であれば、ビンちゃんも触れられるのだから…。


「ねえ、ビンちゃんも、温泉入りましょ!」


「い、いや、私は……」


「なんで? 入ってみたいと思わない? 気持ちイイよ」


「気持ち良いのか?

入れるものなら入ってみたいが…。入れるか?

水は石のようにはいかぬと思うぞ」


「そうかな……。でも、試す価値はあるんじゃない?」


「まあ、そうか…」


「あ、でも、着物……」


 そう、ビンちゃんの赤い着物。

これって脱げるの?


「着物? ああ、これか。こんなものは、問題ない」


 と言ったとたん、ビンちゃんの着物がポンと消えて、あっと言う間にスッポンポン。

 いやだ、人の肌のこと言って、ビンちゃんの方がツルツルのスベスベじゃあないですか。

 やっぱり、お子様姿だから、アソコのヘアは生えてないわね。

当たり前か…。


「こら、何をマジマジ見ておる」


「あ、いや、ビンちゃんの肌こそ、とっても綺麗だな~って」


「やめよ。照れるでは無いか」


 へへ~ん、さっきのお返しですよ。

でも、ちょっと顔を赤くしているビンちゃん、とっても可愛らしい。

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