みどりのおっさん
山下 巳花
①長袖のあいつ
おれのクラス「2年2組」に、常に長袖を着ている女子がいる。
夏が来る前に、担任の小田やんから「楜は事情があって半袖を着る事ができないんだけども・・・特に男子!おまえら、いちいち構うなよ!」と軽く説明的なのがあったにはあった。その日は斉藤が休んでいたので、小田やんはその時を選んでそれを言ったのだと思った。だから、おれは余計にそれが気になった。
小田やんが言った通り斉藤は、真夏になっても半袖を着る事はなかった。
制服は勿論、体操服もだった。
おれはそれがめちゃくちゃ気になったんだけども、クラスのやつらは大して気にする様子もなく、斉藤が長袖でいる事がさも当たり前かのように過ごしていた。
だから、おれもあえて口にはしなかった。
そのうち、冬の衣替えでみんなが長袖になったから、おれも斉藤の事は気にならなくなっていった。
そう・・・席替えをする、あの日迄は。
12月。
くじ引きで、おれは斉藤の真後ろの席になった。
おれは、前の席のやつには男女構わず後ろからちょっかいをかける癖があった。だけど斉藤はノリが悪いおとなしい女子だったから、おれは斉藤には絡まないでいた。いや、絡めないでいた。
だけど、どうした事かそれがクラスの女子に変な勘違いをさせてしまった。
「ねーねー
クラスで一番うるさい女子が、後ろに金魚のふんを2つ連れておれの席にやってきてそんな事を口走った。
「なんでそうなるんだよっ!」
おれはついカチンときて、怒鳴ってしまった。
「だってぇ~・・・池本、楜ちゃんには
言われて、おれは口を
何も言い返せない・・・。
だがしかし、一緒にゲームの話をしていた親友のノセが助け船を出してくれた。
「好きとかじゃないよ!斉藤はおまえらみたいにクズじゃないからだよ!」
「一ノ
金魚のふんの片割れが金魚の背中から顔だけ出して、ノセに叫んだ。
その途端。
おとなしく座っていた斉藤が、突然、だけどゆっくりと立ち上がった。
(何するんだ、こいつ)
おれはドキッとした。他のやつらも同じ思いだったに違いない。
が、斉藤はおれらの方を振り向く事もせず黙って移動し、教室の外に出て行った。
「陰気ぃ~・・・あんな暗いヤツ、池本が好きになるワケないかぁ~」
金魚は偉そうな顔でそう言うと、金魚のふんを連れて自分の席に戻って行った。
「あいつら、めっちゃ性格悪いな・・・俺、ムリ」
ノセはそれだけ言うと、話題をゲームに戻した。
そんな事があったもんだから、おれはまた斉藤の事が気になり始めてしまった。
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