手紙の主はとある国の諜報部員だという人物だった。

それは火星のために

20年後、火星と地球が一つになることを阻止する方法を思いついた

"火星から送られてきたメッセージは火星の滅亡を予言するものばかりであった。

そしてそれを地球に住む人々が知ることにより 地球が生き延びるために、火星に地球と火星が一つにならなくてすむ方法を模索しようということになったのだ。

"私達は火星に、地球が滅びることを知られてはならないのだ"

20年の間に地球を延命させなければならなった。

"地球が火星と同化するために必要なことは、火星が地球と一体化することだけではない。

火星が地球にやってきて、地球と融合した時 地球から、ある成分を取り込まねばならないのだ"

その物質こそ地球と火星が同化される時に必要なものであるということまではわかった。

地球上にある全てのものを火星へ運ぶ手段を講じなくてはならない。

"火星が地球を浸食する前に、我々火星からきた者が地球の大気をすべて入れ替える"

"そのためには地球の酸素濃度を上げなくてはならない。

酸素濃度を上げるには まず水から酸素を取り出すしかない"

"水は 雨として降り注ぐものだろ。

しかし20年前はまだ雨が降っていたんだぞ"

"20年前の地球環境は、今よりももっとひどい環境だったはずだ"

"20年前には水が溢れたんだぞ"雨の水分が海に落ちていく前に大気中で蒸発してしまう。

20年前の地上は雲に覆われた、息苦しい場所だったはずだ。

"それについては私に任せてもらいたい"火星から来た知性体によってもたらされた情報から 地球が生き残る方法が提示されつつあった。

"地球と火星が同化するには二つの条件を揃える必要がある

"地球上に生きる生物が全て死に至ること。

地球が火星と完全に一体化すること。

"私は 地球の環境を再生させるために、20年後の火星との通信途絶までに地球を可能な限り回復させる。

"そして火星は地球の大地に足をつけた地球型生命体のコロニーになっていく。

"俺の嫁さんもその一人なのか？""そうだ 地球で生まれ育った地球適応の生命体"

俺の妻 マーサがその地球型適応生命体の一人なのか？"

そしてマーサと、火星が選んだもう一人の人物 だけが地球と火星との接点となり、火星が地球を蝕み火星の一部とした時に地球と火星をつなげる役割を果たす。

そうすることによって、地球は20年後に地球が火星の一部となったときに生き残れる可能性を秘めることが出来る"マーサが地球から火星へ行き地球を救おうとしているのか？"

しかし俺は お前の夫なのだぞ。

俺はこの20年間 何をしていたっていうんだ。

火星へ行くなどできるわけがないだろう"俺は 火星で20年過ごしたら どうなるんだ？"

俺は地球で生きている地球型生命の遺伝子データを持っている"

20年後に地球と火星が完全に同じになった時に そのデータを解析すれば、地球の環境を火星のように出来るはずだ。

"地球を もう一度 環境に適した惑星にする。

それが 君の使命なのだ"火星から送られてくる情報を基にして、人類の環境改善プランを実行する。

"しかし火星は火星の環境を地球に持ち込んだだけでは火星に根付いた火星人と同じ環境でしか生きられない。

地球で進化し繁殖した地球の環境に合う遺伝子データを、地球人に与えなければならない"

地球上に適応した遺伝子情報を持ちながら火星に住まうことを許されたものが地球に残った者たちの中にいる。

その遺伝子データを地球から火星に送り届ける存在が必要になるのだ"

あなた 私はあなたについて行きます"しかし、その人物は既に地球上には存在しないのだ。

その人物は かつて火星に住んでいた者達の子孫であり、彼らは20年前に地球へと逃げ延びていたのである。

マーサは火星へと向かっていた。

地球上の人間で唯一、火星の環境に適応することができるからだ。

地球に残された人間は、地球から逃げださずに生き残った僅かな人数しか残っていなかった。

"私の娘、君の母親も地球に残る"

マーサの母親は地球に残っている。

マーサの父親は？"君が 君と、母君の二人で地球から火星へ行かねばならないのだ。

火星で火星人と交配をして、火星人に地球の遺伝子データを植え付けなければならない。

火星人の血と遺伝子情報を君たちの中に組み込んでもらうのだ"

マーサの父は地球に残ったままで良いと言うことだろうか？"

あなたが 火星で20年を過ごした後で、あなたは地球に帰りそこで死ぬのだ。

あなたの遺伝子情報が地球上に適合したものかどうかを判断するのは火星だ"

そんなことをしたら 火星人が地球に住み始めたら俺たちの子孫が全員火星の環境に耐えられなくなって全滅しちまうんじゃねーのかよ！"

火星に適応した地球型生命体のDNAと地球に適応できるDNAは全く別物であることがわかっている。

"どういうことだ？"

その火星に適応している地球型生命の親玉が、地球の大気に含まれる炭素14の組成の違いにより生まれた突然変異体が地球の生物の特徴を多く備えるようになった火星に適応した地球型生命だ"

"では火星に運ばれた地球の生命体は""その地球型生命の細胞に火星に持ち込まれても死滅しないように細工されている"その火星に適応している生命の核は、地球にあるということだ。

"俺の体に 火星にいる奴らの遺伝子情報を流し込むと俺はどうなっちまうんだよ"

俺と火星人たちの子供が、火星に持っていかれて火星と地球とが一体となったとき 火星はどうなってしまうんだ？

"君は、20年の間地球に滞在し 火星からの指令を受けたあとは そのまま地球上で死ねばいい。

地球は火星が地球を蝕み 火星に完全に吸収されることで20年後には元の環境を取り戻すだろう"そうすることで火星は地球化されることなく地球は生き延びられるのだろう。

なんというドライでドラスティックな話だ。それで行かされる道があるというのなら、これもまた死中に活を求めるということなのだろうか。