応急救護を習得しよう!~後日談・ガイドライン改訂~

「おい田中。この間習った応急救護だけどな、ガイドラインが改訂されて内容が変わったらしいぞ」

「マジでか、山川? なんだよ、一生懸命覚えたのにぃ。若者の記憶力過信してんじゃねぇぞ、簡単に上書き保存なんてできないんだからな。どんどん劣化して、最終的に絡まったワカメみたいになっちまうんだからなー!」

「ビデオテープか。医療は日々進歩してるんだから、俺たちも過去学んだことに囚われず、常に新しい知識を取り入れてくことが大事だろ」

「へーい、山川先生。で、何がどう変わったって?」

「前は傷病者の呼吸がないことを確認したらすぐ人工呼吸に入ったが、新しいガイドだと、先に胸骨圧迫三十回を行うようになったらしい。はい復習」

「ええと、乳首と乳首を結んだちょうど真ん中に片手を置いて、もう一方の手をその上に置いて軽く組むだろ? それで、肘が曲がらないようにして、患者の胸を真上から垂直に押す。アン●ンマンのマーチのリズムだったよな!」

「講習動画を見る限りでは、ア●パンマンより若干テンポが早いような気がしたが」

「じゃあ、早送り中のアンパ●マンでいくか」

「こうなったらアンパン●ンから離れてもいいんじゃないか?」

「ではいざ! いっち、にー、さっん、しー、ごー、ろく、しち、はち……」

「もしも傷病人が口付近を怪我していたり、人工呼吸そのものに抵抗感があるようなら、無理に人工呼吸をしなくてもいいから、それよりも胸骨圧迫を続ける」

「じゅーしっち、じゅーはっち、じゅーく、にーじゅ……」

「意識や呼吸が戻らない、AEDや救急車が来ないうちは、やっぱり胸骨圧迫を続ける」

「さんじゅさん、さんじゅし、さんじゅご、さんじゅろっく……」

「届いたAEDのパッドを貼る間や、電気ショックを与えたあとも、胸骨圧迫を続ける。とにかく続ける。救急隊員に引き継ぐまで絶対に諦めない。ひたすら続ける」

「ごじゅご、ごじゅろく、ごじゅしち、ごじゅはち……!」

「……」

「きゅうじゅはっち、きゅうじゅきゅっ、ひ、ひゃく……っ!」

「ちなみに救護者が複数いる場合、一、二分ほどの間隔で交代しながら胸骨圧迫を続けるのが基本だ」

「も、もっと早く言ってえええぇぇぇっ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る