応急救護を習得しよう!~その7・AED~

「よし、ここでAEDが届いたことにするか」

「ああ、ビリビリ復活機」

「それ、定着させたいのか? 『Automated External Defibrillator』、略してAEDだ」

「なんでもかんでもアルファベットに略するのって、かえって混乱を招く悪習だと思うんだ、俺。WCだのTDLだのFIFAだのTOEICだのT&Yだの」

「じゃあお前は、この緊急時に、通行人に向かって『自動体外式除細動器を持ってきてください』と叫ぶつもりなのか。九割方聞き返されると思うぞ……T&Y?」

「仕方ねぇな、AEDという略称に甘んじてやるよ。これって、止まってる心臓を電気ショックでビックリさせるとか、そういう仕組み?」

「イメージは分からなくもないが、違うな。心筋梗塞とかが原因の心停止の時って、心臓が痙攣を起こしてる状態なんだよ。その痙攣を止めて正常な動きを取り戻すことが『除細動』で、AEDはその除細動を起こすための機械」

「サボリがちで不定期にしか登校しない生徒に、誰かがビシッと心に響くような一喝をして、毎日きちんと学校に出てくるようになった、みたいな?」

「合ってるような間違ってるような、たぶん間違ってるな。AEDが届いたら即、電源を入れる。他に人がいるなら、AEDの準備をしている間も心肺蘇生は続行するように」

「電源入れるぞ、ぽちっとな! ……うお、なんか機械が喋った!」

「AEDは電源を入れると音声案内をしてくれるタイプが主だからな。指示に従って、電極パッドを患者の胸に貼る。体の前面が濡れていないか、金属を身につけていないか、ペースメーカーを入れていないかに注意すること」

「うるせぇ、俺は俺の道を行く! 大人が敷いたレールを辿るだけの人生なんて、もうまっぴらだ!」

「黙って言うこと聞け、レール外れたら迷子確実の青二才」

「えーと、こことここに貼ればいいんだな?」

「AEDが患者の心電図を解析するから、妨害をしないように患者から距離を取る。他の処置をしている人がいたら、その人にも一旦離れて貰う」

「離れろ! みんな、早くここから離れるんだ! ……くっ、駄目だ、時間がない。一か八かだ、赤のコードを切れぇっ!」

「なんで爆弾処理になってるんだよ。おら、ショックが必要だってAED様が仰せだぞ」

「はいAED様、俺はどうすればいいですか? 患者からまた離れればいいんですね? 充電が完了したんですね? そのでっかいボタンを押せばいいんですね?」

「指示のとおり、ボタンを押して電気ショックを実行する」

「うおおおお、喰らえ、正義の田中エレクトリカルサンダースペシャルーッ!」

「予想はしてたが、だっせぇ技名を付けるな」

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