慎重に化学実験を行おう!

「実験って授業よりは楽しいからいいよな、山川」

「まあ、確かにな。田中、そこのビーカー取ってくれ」

「ほいよ! ぶっちゃけ何を実験してるのかはさっぱり分かってないけど、山川が同じ班なら指示も出して貰えるし」

「あのな、それじゃあ実験の意味が無いだろ」

「意味なんか無くていいんだよ、楽しければそれで! で、次は何すればいいんだ?」

「自分で考えろ」

「え?」

「俺は何の指示も与えないから、自力で判断して次の行動に移せ」

「……ヒントくれ」

「じゃあヒント。『そこのナトリウムを』」

「……『水を張った容器に大量投入する』?」

「……いいぜ、やってみろよ」

「あ、そう? じゃあ早速、そこの空き水槽に水を溜めて」

「いや、ちょっと待て、田中。水槽とナトリウムを持って運動場の真ん中へ行き、そこで実験しなくちゃいけないぞ」

「そうなの?」

「そうだよ。実験をする際には必ず、周りに誰もいないことを確認するように」

「あー、うん」

「人から何か借りて、返してないなんてことは無いか? あと、告白してない好きな子とか。ああ、家族に対して言っておきたいことは?」

「えーっと、夕飯はカレーがいいです?」

「分かった、伝えておく。そういやお前、購買のあんパン食いたいって言ってたよな。ひとっ走りして買ってこようか、俺のおごりで」

「えー、そんな、何だよ山川ぁ、お前にしちゃ異常に優しくないか~?」

「いくらお前が馬鹿でも、二度と会えないかもと思ったらな」

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