余裕を持って登校しよう!

「うあ~、ギリギリセーフっ!」

「何がセーフだよ、田中。とっくに始業ベル鳴ってるぞ。っていうか、正門で先生に捕まってるところ、ここから見えたんだが」

「あ、おはよっす、山川! いや、それはそうなんだけど、遅刻のチェックは受けなかったんだな、これが」

「はあ? 何でだよ」

「実は、学校に来る途中にな――」

「?」

「迷子の宇宙人が俺に助けを求めてきたんだよ。そいつは地球の特殊捜査官に追われていたが、決して悪いやつなんかじゃなかった。言葉は話せなかったが、いわゆるテレパシー能力を持ち、俺の頭に直接話しかけてくるんだ。自分の星に帰りたい、と――」

「……」

「俺はそいつを自転車の籠にのせ、次々現れる捜査官たちを振りきって郊外へと走った! そこにはなんと、巨大な宇宙船がそいつを迎えにやって来ていたんだ」

「……」

「俺は別れを告げた。そいつも、俺の頭に話しかけて別れを告げた。さようなら、そして元気で、と。宇宙船は音も無く飛び立って、空の彼方へと消えていった――」

「……それ、先生に話したのか?」

「うん。そしたら、目頭を押さえながら『行っていいぞ』って」

「ノリが良すぎるだろ、先生」

「ちなみに、特殊捜査官に撃たれた傷がこれな」

「本当にあるのかよ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る