第46話 私は救出する

不意におじいさんが立ち上がった。


「どうしたんですか?」


聞くまもなく、


『助けて助けて影!倫子ちゃん!』


広川さんの声だ!!!


私は慌てて立ち上がる。


「おじいさん!!」


「緊急の時押せといった番号に連絡が入った。」


「どんな?」


おばあさんが聞く。


「いや。いざというとき押せと言っただけなので内容は分からない。」


私は心の中で光を呼ぶ。




ダイジョウブヨ イマノトコロハ


クルマノナカニ イルワ


アズマト ナノルモノガ ウンテンシテイル




光の言葉をおじいさんに伝える。


「今のところは大丈夫だそうです。

 ・・・東と名乗る者が運転しているそうです。」

いてもたってもいられない。

「・・汎国の神官か。」

「ええ。」

私は立ち上がって部屋から出ようとする・・



「待ちなさい。」

おじいさんに止められた。

「今、君はここを出るわけにはいかない。闇雲に家から出ても何もできないよ。それから・・・

 彼が本当に神官ならば命を取ることはない・・・はずだ。」

おじいさんは私が家を飛び出そうとしていると思ったに違いない。確かに衝動的に走り出るところだったけれど・・・

「その人一人でしたらね。他にもいるとしたら?」

おばあさんが顔をしかめて言う。

・・・

おじいさんは黙って立ち上がり、対策を取るために部屋を出て行った。



マッテマッテ イマジキニクルカラ



何を待てと?

・・・

いらいらするくらいの時間。


「ただいま戻りました。何がありましたか。」


影だ。



すぐ、おばあさんが事情を説明する。

「東か。城山さんは?」

「情報処理室にいるわ」

「では我々もそちらに。」


影は一瞬で水戸君に姿を変えた。


「見られても倫子ちゃんが二人いると思われることはありませんね。」


おばあさんがのんきに言う。


 三人で情報処理室と言われた部屋に行く。前案内されたとき、おじいさん達の部屋があると言われた場所の一角にその部屋はあった。




今、おじいさんは警備関係の人たちと連絡を取り合っているらしい。


水戸君はおじいさんのそばに行って車の特徴などを教え始めた。


車はまだ見つからない。


 もう一度光に話しかける。


どこにいるか分かる?


どうしているか分かる?


・・・


フツウノ ヘヤニイル ソファー テーブル


テーブルノ ウエニハ オチャ


アズマト モウヒトリ ワタシタチノ シラナイ ヒト


ハンコクノ テンノ シンデンノ カンケイシャ カシラ


イヤナ カンジハ シテイナイ ケド・・・


マッテ マダ ナニカ アル クルマニ ニタ ナンダロウ


ヒコウキ?


ヘヤノ シタニ ナニカ アル ワカラナイ


アア ジュウノ ケハイガ スルワ 


ダレカガ モッテイル・・・


私、そこに行ける?


イケルワ


ハコンデ アゲラレル


・・・私一人では心許ない。


カゲモ イッショデモ ダイジョウブヨ


おじいさんに

「ヒカリが連れて行ってくれると言っています。」

と教える。

「私行きます。」

三人にかなり強く反対された。

「影はよい。慣れているだろうからな。」

「だが倫子ちゃん。君は違う。」



ヒカリがささやく


ハヤクシナイト ベツノ トコロニ


イドウヲ シテ シマウ


別のところ?


ドコカ ワカラナイケド


慌てておじいさん達にそのことを伝え、

心の中でヒカリに願う。


連れて行って


イイノ?


・・・影もよ。


一瞬で影と私はその部屋に着いた。


「倫子ちゃん。」

広川さんが立ち上がる。向かい側の男も一緒に立ち上がり、水戸君を見て

「ほう。水戸か。」

と言う。

「この方は?」

知らない男が聞く。

「驚いた。神子はこんなこともできるんだな。」

東君?の恍惚とした表情が怖い。


私は広川さんに駆け寄って手を握りしめた。


「行って。俺のことはかまわずに。」

影が身構えながら言う。

「え?」

いいの?

「早く!!」

足手まといになってはいけないのね。

ヒカリヒカリに願った。

「帰るわ。」


一瞬のうち、私たちはまた情報情報処理室にいた。


・・・・・・


影はどうなったんだろう。


 もう一度。行った方がいいのだろうか。


 ヤメテ オイタ ホウガ イイワ


 アノヒトタチハ アナタノ チカラヲ 


 ミテ シマッタ 


 キット


 アナタヲ トラエヨウト


 スルハズ




 コンカイハ ウマク イッタケド ツギガ アルトハ カギラナイ・・・


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