第41話 私はデートの出汁?
次の日・・木曜日。
朝からどんよりとした天気で、私の心のようだった。
いつものように車のところへ行くと、今日も広川さんが立っている。徹底して私をガードしてくれるつもりのようだ。
ここのところずっとおじいさんは私より先に学園に行っている。いろいろすることがあるみたいだ・・・
車から降りると相変わらず東君と水戸君。
私たちが歩き出すと前後についてくるのも同じ。水戸君は分かるけど・・・東君は何でいつもいるんだろう。また何か仕掛けてくるのかな。ちょっぴり警戒しながら歩く。
「何をそんなに警戒してるんだい?」
東君が聞いてくる。
少しぶれて見える東君は、にやにやしている顔と心配そうな顔が重なって見える。どちらが本当の顔なの?気分が悪くなりそうだ。
「東君が前に住んでいたところってどんなところだったの?」
広川さんがさらりと話を振る。
「車の中で話していたのよ。どんなところだったのかしらって。」
東君は
「いやあ。俺の住んでたとこかい?」
と言いながらうれしそうに笑った。困ったような顔で笑っている顔も見える。
本当の東君はどっち?
まがまがしさは感じない・・・でも・・・
「おはよう。」
英田さんだ。にこやかに笑う英田さん。いつもと同じだが・・・重なる英田さんはなんだか不安そうに見える。東君を警戒するように見て、
「なんか気のせいか、最近東君も水戸君も倫子ちゃん達と一緒に来てるみたいに見えるわ。」
水戸君が間髪入れずに答えるのを聞いてびっくりする。
「いやぁ俺はさ、広川さんにつきあってアピールしてるつもりなんだけどさ。全部スルーされてるんだよなぁ。」
広川さんはきっと水戸君を見る。水戸君はにっこりして頷く。
「ここではっきり言っとくわ。広川夏子さん、俺とつきあってください。」
広川さんはしばらく水戸君を見ていたが
「いいわ。
でも。基本私は倫子ちゃん優先だからね。」
と答えた。
「そんなのかまわないさ。かわいい子は歓迎だ。やった。みんなが証人だ。」
水戸君は本当にうれしそうに笑った。表の顔も,裏の顔も。
・・・・もしかしたら,一緒にいるための口実?!
広川さんもそう思っていいわと言ったのかな。
東君の方を伺うと、面白そうな顔と、してやられたとでも言う顔が重なって見える。もしかしたら、同じことを考えていたのかな。つきあっていれば一緒にいても不思議じゃないから。
薬の効き目は徐々に薄れてきているらしい。広川さんがお昼にこっそり私に言ってきたのだ。え?でも私は。まだ見える。
ソウヨ ワタシタチハ アノクスリトハ アイショウガ イイノ
ダッテ モトハ オナジダカラ
元は同じ?
ワタシハ アナタ キンイロノ ナノハナモ ワタシノ スガタノ ヒトツ・・・
光は菜の花? 菜の花が光?
ソウトモ イエル
ソウトハ イエナイ
「 ・・・倫子ちゃん?何ぼんやりしているの?」
「・・山名さん。・・・次のラプでは何を選ぼうかと思ってただけよ。」
「知ってる?また新作メニューが出たのよぉ。」
近くにいたクラスの女の子が言い出す。この人もいつも優しい人。
近くの何人かでラプの新作メニューの話に花が咲く。聞いてる振りしてにこにこ相づちを打ちながら私の頭は別のことを考える・・・夕べの倫太郎君との通話。
『・・・姿替えは闇の力・・・そうか。おじいさんの力のことも知ってしまったんだね。』
『悪い力じゃない。その通りだ。悪用すればもちろん悪い力になる。でも,それはどの力でも同じことだよ。』
『・・・なるほど。菜の花は光であって光でない。光でなくて光でもあるってことか・・・闇は光を求めるからね。
・・・そうだよ。おじいさんも菜の花を大量に必要としているんだ。
枯れてしまって大変なのはおじいさんの方かもしれないな。
僕?成長はまだ途中だけれど、以前みたいに大量には必要としていないよ。
もちろんなければ困るのは一緒だけれどね・・・
僕は君のそばにいると落ち着くし、居心地がいいし・・・・もう一つ・・・
いや。また直にあったときに・・・
おそらく、おじいさんも君のそばは居心地がいいと思っているだろう・・・ 』
『・・・護衛が誰か分かったことは良かったと思う。
・・・なるほど・・・そばにいる口実ね。ふうん。』
「倫子ちゃん?」
またぼんやりしていたらしい。
「もう午後の授業が始まるわよ。」
私たちは立ち上がって教室に向かう。
水戸君が現れて広川さんに
「土曜日デートしようぜ」
と持ちかける・・みんな興味津々で見つめる。
「土曜日の午後は約束があるの。」
「じゃあ午前中。」
「・・・午前中は倫子ちゃんに薬学の分からないところを教えてもらうことになってるのよ。」
「俺も行っていい?」
・・・・・顔を見合わせる。頷き合い・・・
「いいわ。」
みんなどよっと声なき声を上げる・・・
「デートが倫子ちゃんの家って・・・」
山名さんがあきれている。
「いいんだ。ははは。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます