5.仮面
5.仮面
コーヒー?
もはやお決まりのバックトラッキングだ。
そうよ。このあとテイスティングの仕事があるのに、濃くて苦いコーヒーをがぶ飲みするし、毎日2,3杯も飲んでるなんて、なにか怪しいわ。
そう言うや否や、驚異的なスピードでスマホ操作をし始めた。
たしかに…でもなんで彼はそんなことを。よほど自分の舌に自信があるのかしら。
そうですね。これだけの情報ではなんとも言えません。濃くて苦いコーヒーを毎日飲むソムリエなんて存在しないとは言い切れないですしね。ですので、実際に見てみましょう。
まさか、スタジオ収録に行くってこと?さすがの「親会社」さんもそこまでは…
もう手配済みよ。行きましょう。
さすがメライ。仕事が早いね、ありがとう。じゃあ行こうか。
秘書から事件当日のスケジュールや取材を受けた記録のコピーを受け取り、4人はビルを出た。すぐにタクシーへ乗り込み、収録現場へ向かった。到着後、関係者との話を済ませるとスタジオのスタッフエリアへ通された。
ここでしたら自由にご覧いただいて構いません。当然ですが、これから収録が始まりますので中には立ち入らないようお願いします。
はい、わかりました。ご無理を聞いていただきありがとうございます。2人ともしばらく静かに待てるね。
そんなの当たり前よ!子ども扱いしないで!
はは。ごめん、ごめん。悪かったね。
それから数十分後、収録が始まった。
おや?
あれ?あの人は顔を出さないの?
ご存じないんですね。いつの頃からか、ご本人の希望で声だけの出演になったんですよ。昔はどちらかというと目立ちたがりな方で露出も多かったんですけどね。理由はよくわかりません。
そうでしたか。それは取材などカメラが回ってなくてもですか?
はい。私は直接取材をしたことはないので聞いた話ですが、メディアに出る仕事では、声だけの出演を徹底しているようです。
ほう…そうですか。
じゃあ、ますます怪しいじゃない!
え?怪しいとは?
失礼。こちらの話です。ところで、もしご存知あれば伺いたいのですが…
はい。あーそれは…いくつかありますね。
お手数をおかけしますが、もしよろしければ、ご確認いただきこちらへお電話いただけるでしょうか。
わかりました。調べて連絡しますね。
ありがとうございます。
奥さん、それではお暇しましょう。
え?もういいの。わかったわ。
この度はお取り計らいありがとうございました。責任者の方にもよろしくお伝えください。それでは失礼します。
そうですか。お気をつけて。先ほどの件は、本日中には電話できると思います。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます