第23話 汚れきっておりました

ああ、もう。何て言うか。

なんか、いろいろすまん。


代官セドリックの≪直近のプロフィール≫を読んで自分が恥ずかしくなった。


汚れていたのは自分の心だった。

高橋文明の心は前の世界の文化によって、汚れきっておりました。

そうだよね。六歳の男の子に欲情なんかするわけないよね。

前世で読んだことがある変な創作物に毒されていた。

ロランの中の人は三十九歳プラス六歳のおっさんだから、このままではおっさん同士のラブになってしまうとか、自分一人で勝手に勘違いして、変な妄想をたくましくし、毛嫌いしてしまった。


自分に近づいて来たのは亡くした息子の面影を俺に見ていたからだった。

セドリックよ、ごめんなさい。



『スキル≪カク・ヨム≫の創作タイムが始まります。5分以内で代官セドリックを改稿してください。改稿が終わったら、公開ボタンを押してください』



こんな汚れきった俺っちを養子に欲しいなんて思ってくれた人を何か変な「改稿」して利用したり、実験したりする気にはなれなくなってしまった。

能力値を上げて健康を増進させたり、彼の仕事に役立つスキルを強化してあげてもいいが、代官セドリックのステータスやスキルは、今まで見た人物の中でも最強だし、「改稿」の必要性はあまり感じない。


今回は『プロフィール・リライト』を使って、何か罪滅ぼしになるようなことが出来ないか、やってみよう。



≪直近のプロフィール(改稿前)≫

ダンマルタン子爵からの信任厚く、ウソン村を含むこの辺り一帯の領地の運営を任されている代官。自身も過去の戦功から、王家より騎士爵を賜っている。一人息子を落馬による事故で亡くしており、その悲しみからまだ完全に立ち直っていない。足が速いのが自慢だった息子にどこか似たところがあるロランをいたく気に入り、養子に欲しいと考えている。


文章中から『おり(2文字)』を消し、『いたが(3文字)』を書き加える。『まだ(2文字)』を消し、さらに『ていない(4文字)』も消して、『た(1文字)』に書き換える。



≪直近のプロフィール(改稿後)≫

ダンマルタン子爵からの信任厚く、ウソン村を含むこの辺り一帯の領地の運営を任されている代官。自身も過去の戦功から、王家より騎士爵を賜っている。一人息子を落馬による事故で亡くして、その悲しみから完全に立ち直っ。足が速いのが自慢だった息子にどこか似たところがあるロランをいたく気に入り、養子に欲しいと考えている。



スキル『カク・ヨム』を使って、悲しみを消す行為が善か悪か、今は分からないが、日々暮らしていく上では、気持ちが楽になるのではないか。

≪直近のプロフィール≫の改稿には、まだ未知数な部分が多いが、気分の切り替えぐらいにはなるだろう。


代官セドリックの改稿後の幸せを祈りつつ、≪公開≫ボタンを押した。




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