第11話 テメーは俺を怒らせた

朝起きて最初に気になったのは、母アンナの顔色だった。

昨晩は寝てないのか、目の下には隈ができており、一晩で何歳も老けてしまったかのように見えた。


ロランは自分の目の前に盛られた朝食を食べながら、シモンの皿の料理を奪い、シモンが伸ばしてくるスプーンを何度も撃退した。

シモンの目にはおそらく何が起こっているのか把握できていないだろう。

スプーンをロランの皿に近づけると謎の力に弾き飛ばされて、スプーンが遠くに飛んでいく。スプーンを取りに行くと、自分の皿の料理が減っている。それをどうにかしようと再びロランの食事を奪おうと試み、スプーンを吹き飛ばされる。


長かった。ほぼ三年間にわたって、シモンに食事を奪われ続けた。

同じ年頃の子供と比べて少し小柄なのもシモンによる栄養失調が原因である可能性もあったので、奴に対する恨みは根深い。


シモン、テメーは俺を怒らせた。


「ご馳走様」


ロランは一人前半の朝食を平らげると母アンナの前に行き、抱き着いた。


「あらあら、甘えん坊さんね」


アンナは食が進まないのか、まだ食事中だったが、抱き着いてきた息子の頭を優しくなでてくれた。


ロランは抱き着きながら、母アンナに対して、「カク・ヨム!」と心の中で念じてみた。発声無しで発動できるか実験だ。


さらに一日一回の使用ということだったから、もし今使えるならその境は、前の世界で言うところの深夜の零時に当たる時間だと推測できる。


室内の食事時特有の喧騒と窓の外のすべての音が止まる。

母を含め、全ての存在が身動き一つしなくなる。


どうやら、スキル『カク・ヨム』は声に出す必要はなく、念じるだけで使えることがこれで証明された。


今まさに静止した時の中を動けているのは俺一人。まさに、ザ・ワールド、オブ、マイン。


『スキル≪カク・ヨム≫が発動しました。農民アンナのステータスを表示します』



名前:アンナ

種族:人間

性別:女

職業:農民

年齢:30歳

星:0

PV:1

ハート:0

レビュー:0

フォロワー:0


レベル:9

HP:6(14)

MP:3(13)

筋力:8

体力:5

器用:14

敏捷:8

知力:13

魔力:7

信仰心:12

こうげきりょく:15

ぼうぎょりょく:9

天賦スキル:家事C

習得スキル:裁縫D、語学E

≪直近のプロフィール≫

ウソン村の農民。アキムの妻で、ロランの母。かつては村一番の美人と評判であった。最近は農作業に子育てと、忙しい日々を過ごしている。アキムのことは愛しているが、夜の営みによる疲労と睡眠不足で今にも倒れそうである。



おお、これが俺のおっかさんのステータスか。

今まで見たステータスの中では一番低い印象だな。

体力は5しかないし、これだと病弱気味だったのもうなずけるな。


ヤバいぞ。直近プロフィールに今にも倒れそうだと書いてある。


アキム、夜の営みを少し自重してくれ。

このままだとアンナがお前に殺されてしまうぞ。



『スキル≪カク・ヨム≫の創作タイムが始まります。5分以内で農民アンナを改稿してください。改稿が終わったら、公開ボタンを押してください』



とりあえず母アンナが過労死しないようにしなければならない。


アキムの時と同じ≪ステータス・リライト≫を使おう。


今回は『体力:5』の5の前に数字が入れれることができるか試してみよう。


5の前に9を入れて、『体力:95』にできた!


自分に使った時には、思いつかなかったがこのやり方の方が能力値を伸ばせた。

俺って頭悪いなあ。

少し損した気分である。


とにかくこれで、アンナとアキムは同じ『体力:95』だ。

過労死問題は発生しないはずだ。


あと数字を一つ書き加えることができる。

どれにしよう。


筋力上げすぎると怒られたときにビンタで首がもげそうだし、敏捷だと悪戯が発覚した際など逃げきれなくなる可能性がある。


少し加減して『筋力:8』を『筋力:18』にしよう。


これなら筋力と体力が、アキムと互角だし、問題ないだろう。

重いものを持つのに苦労していたし、疲れも減るだろう。


俺って本当に親孝行だな。

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