第10話 明日の朝食が楽しみだぜ

スキル≪カク・ヨム≫の対象は人である。

これまでインチキ司祭と父に使ってみたが、今のところ第三者にはちゃんと発動した。


では、もし自分に使ったらどうなるのか。

実験してみよう。

テーブルに向かって使った時には、『対象者がいません。対象者を選び直してください』とメッセージボードが出たので、無理ならばまたそのメッセージが出るはずだ。


ロランは自分の顔に手を当て、小声で『カク・ヨム』と呟いた。


『スキル≪カク・ヨム≫が発動しました。主人公ロランのステータスを表示します』


お、やった。

やっぱり自分にも使えるみたいだ。

父母の恥ずかしい声も、兄弟たちのいびきや寝息も聞こえなくなった。

起き上がってみると、兄弟たちの動きは止まっており、シモンのほっぺを強くつねっても身じろぎひとつしていない。


ロランは、スキル≪カク・ヨム≫を使われた対象者が固まるのだと思っていたが、そうではなかった。


ロラン以外の全ての時間が停止していたのだ。


対象のステータスを書いたり読んだりするのもチートだが、五分間時間を止めれるのも相当チートだ。

チートにチートのダブルチート。

感激で全身が震えそうになる。



そして、マイステータスの確認だ。


名前:ロラン

種族:人間

性別:男

職業:子供

年齢:6歳

星:0

PV:1

ハート:0

レビュー:0

フォロワー:0


レベル:1

HP:10

MP:3

筋力:6

体力:6

器用:4

敏捷:4

知力:3

魔力:2

信仰心:2

こうげきりょく:8

ぼうぎょりょく:8

天賦スキル:『カク・ヨム』F

習得スキル:語学F



うん、やっぱり弱い。だが子供だし、こんなもんだろう。

信仰心がインチキ司祭と同じとかはちょっと嫌だけど、宗教色薄いジャパン出身だから仕方あるまい。

他の人と違うのは≪直近のプロフィール≫の欄がないことだ。

これは仕様なのだと受け入れよう。


問題はこのステータスをどういじるかだが、父アキムを見ていれば能力値の上昇は劇的な効果をもたらすようだ。


というわけで、自分にも≪ステータス・リライト≫を使うことに決めた。

同じ人間には年一回しか改稿できないみたいだから、よく考えねば。


『スキル≪カク・ヨム≫の創作タイムが始まります。5分以内で主人公ロランを改稿してください。改稿が終わったら、公開ボタンを押してください』


アキムの時は数字を一つ消して、一つ書き足したわけだが、今ある数字の後ろに『数字を書き加える』ことはできるのだろうか。


とりあえず『体力:6』の後ろに9を書き込んで、『体力:69』にしてみる。


お、できた。実験成功だ。

『体力:69』なら、アキムほどではないけど大人を圧倒している数字だから、かなり変化を感じるはずだ。


そして、これならもう一つの能力値を劇的に上げることができる。


もう一つは『敏捷:4』の後ろに9を書き込んで『敏捷:49』だ。


名前:ロラン

種族:人間

職業:子供

年齢:6歳

星:0

PV:1

ハート:0

レビュー:0

フォロワー:0


レベル:1

HP:84

MP:3

筋力:6

体力:69

器用:4

敏捷:49

知力:2

魔力:2

信仰心:2

こうげきりょく:8

ぼうぎょりょく:93

天賦スキル:『カク・ヨム』F

習得スキル:語学F


歪なステータスになっちゃったけど、絶対これ強いだろ。

無尽蔵な体力と抜群の回避能力。

ふはははは、「当たらなければどうということはない」ってやつだ。


しかもうれしい誤算だったのが体力と敏捷を上げたら、HPと「ぼうぎょりょく」も格段に向上した。

どうやら、能力値は他の数値とも複雑に関係しあっているらしい。


鼻歌をしながら、≪公開≫ボタンを押す。


≪カク・ヨム≫の創作タイムが解除されて、再びあの激しい物音と痛みで飛び起きたシモンの悲鳴が聞こえた。


ロランは寝たふりをしながら、シモンの様子にほくそ笑む。


これでシモンの奴に次から、飯を盗まれることはなくなるはず。

明日の朝食が楽しみだぜ。


≪カク・ヨム≫最高!

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