彼女の手癖

バブみ道日丿宮組

お題:彼女と軽犯罪 制限時間:15分

彼女の手癖

 手癖が悪いことを自覚しだしたのは中学の入学当初ぐらいからか……。

 彼女の身の回りにはいつも見慣れないものばかりが並んでた。

 彼女自身も気づいたら持ってたというくらい自覚のないスリ。盗られた方もいざ使おうとした時にないことに気づくくらいの手際の良さだ。

 当然被害者たちは怒り彼女を罰した。僕はそんな彼女を唯一擁護した。

 しかし……消しゴム、鉛筆、クレヨンと、実際のところ盗んでも仕方のないものばかりだ。だが軽犯罪に違いはない。

 やめられないという事実は一向に変化しなかった。

 だから、契約をした。

 彼女が何か不思議なものを自分で見つけた時、あるいは手にした時僕のところへ一番にやってくると。

「しかし、まぁよくこれを無自覚に盗んできたものだね?」

「えっと、それは……わからないわよ!」

 彼女が僕に渡してきたのは学校指定のスクール水着。しかも女性用だ。いや、ここで男性用といってもおかしいことには変わりはない。変わりはないのだが、

「わ、私が好きなのは男の子! お、女の子は、ち、違うから!」

 顔を真っ赤に染めて、ストロベリーみたいだな。

 見つけた時はきっとトマトみたいな色がついてたに違いない。

「これを戻すにはこの名前通りの人のロッカーに戻すのが一番じゃないかな?」

 しかしまぁ……なんでスクール水着なんてものを今の時期にロッカーに入れっぱなしになってたんだ? いや、ロッカーから彼女が撮ったとは限らない。

 カバンの中にあったと仮説しても、このあたりのプールにわざわざ学校指定のスクール水着(しかも名前入り)を着たいとは思わないだろう。

 少なくとも、男である僕がそう思うのだから、敏感な女の子はより強いはずだ。現に目の前にいる女の子は恥ずかし度が増したせいか机の下に隠れてしまった。

「……パンツ見えそうだからやめて」

「え、え、え、やだ見ないでよ!」

 反射的に外を見つめ、数秒後の『いいよ』のタイミングで彼女に視線を戻す。

 ストロベリー色は消えそうになかった。

「じゃぁ返しに行こっか」

「う、うん、い、今ならたぶんいないよね?」

「冬に水着はいらないからね、このタイミングなら大丈夫でしょう」

 彼女が心配な雰囲気を醸し出しながら廊下に出たところを確認した後に、もう一度外を見る。

「……夜だしな」

 この状態で見つかったら、間違いなく僕が彼女にえっちなことをしようとしてるとでも噂されてしまうから、早くすまして返そう。


 その後スクール水着を返すことには成功したのだが、次の日僕のスマートフォンがなかった。

「はぁ……」

 気づかない手癖はもはや一流のパフォーマンスに近いよな。

 彼女が軽犯罪で捕まらないように僕はきっといつまでも側にいることになるだろう。

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