統一された世界で僕は何を

バブみ道日丿宮組

お題:情熱的な空想 制限時間:15分

統一された世界で僕は何を

 空想が現実になったらと少年時代は思ってたものだ。

 ま、そんなことが叶うのであれば世界は悪に染まってただろう。

 なんたって『世界一の富豪とやらが世界を統一してしまった』。

 そう……国家も言葉も違いがこの世界にはなくなった。

 違いがあるとすれば、女か男かそういうことだ。映画にしても本にしても面白いもので、昔のものはこう種類が分かれてるのに今の時代の作品は同一。富豪が決めたジャンルに沿ってる。

 読書好きにとって言語の壁がなくなったと考えるならいいのかもしれない。仕事もそう。翻訳家というのは必要無くなったし、看板やら、そういう建築物、注文表も同じ言語。貨幣も当然そうなったから、色々仕事が潰れた物も多いがそのぶん増えたものもある。

 僕の時代は既に統一されてたから、友だちもみな同じ言語、同じものを楽しめてる。けれど、富豪によって統一されて間もない世代……父親の世代は違う。

 決められた言語を覚えなくてはいけないし、習慣も変えなければいけない。そういうアドバイザーがつまりは今仕事として流行ってる。

 とはいっても、これは富豪の執事たちらしく……結局は仕事も富豪に与えられなければならない状況である。

 争いごとは多少なくなった。

 いじめもなくなった。

 差別という意識をするという感覚が消えてしまった。

 僕もお金持ちにいつかなりたいと幼稚園で思った時に考えた空想。

『悪さをした人を通報すればお金と交換』

 それが現実になってしまった。

 だから、差別意識をしたら報告されてしまう。

 ある意味で怯える毎日とも言える。

 父親は仕事の面倒は減ったかなとある程度定時に帰ってくるようになった。それも富豪が必要な会社と不必要な会社を仕分けし破壊したから。

 そこで余った人材をきちんと必要な会社を大きくするために振り分けた。そうやって、必要な会社はより大きな力が生まれ、仕事にも余裕がある世界になったということだ。

 ただ、スポーツマンは難しいらしい。オリンピックというのはもはや大運動会というどれだけ人間の中で素晴らしい人がいるかを発表する催し物になってしまった。

 そこでは画家、漫画家、小説家。いろいろな人がその場で戦う。スポーツは運動以外にも当てはめようという考えだ。

 だからこそ、僕がいる読書部でもひたすらタイピングしてる人が何人かいる。

 僕はそういうことは興味ないので、書いたものをひたすら感想をいうぐらい。

 ここも難しいもので、どこがわかりにくいとか、どこからが山場なんかも注意してあげないといけない。なんたってオリンピックに出場ともなれば、僕の名前が協力者として出てしまうからね。

 うーん。そう考えると興味ないってわりに大分重いな。

 情熱的な空想に僕もそろそろ入り込むべきだろうか。

「……ん」

 部室の窓から見える人工太陽はそろそろ明かりが消えようとしてた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

統一された世界で僕は何を バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る