忙しくて
バブみ道日丿宮組
お題:楽しかった男の子 制限時間:15分
忙しくて
老けたなと親戚を見て思う。
「……」
大体そういう時は自分が大人になっただけでまわりはそんなには変化してない。男の子だったのが青年になって、社会人になっただけだ。
「どうしたん、兄ちゃん」
「いや、お前がハイハイしてる時を思い出してな」
「何年前のことだよ!?」
笑う青年は今年社会人1年目を4月に迎える。
異例の職場らしく、既に危なげだが若い頃からの調教たちのせいか免疫力だけはついてるはずだ。
「へんなのたくさんらしいけど、大学のほうがあほが多かったよ」
「そうか、雑学も役に立ったか?」
働く上でいかにしてサボる方法、そして知識を得る方法を中学校、高校ぐらいから親戚のこの男の子だった青年に教え込んだかいがあったものだ。
名大に受かったのはこいつのやる気だとはさすがに思うがな……、こいつの頑張りは俺以上の才能があるといっても過言じゃない。その代わり、授業態度、家での態度が悪いっておばさんに言われたけど、それが全てじゃないし本心じゃないのも俺は知ってたから、大丈夫だよと返すぐらいで、
「面接でひたすら相手の話すことを先読みして全部話したよ」
と、余裕の笑み。
「なるほどな。大体の会社にはテンプレートがあるからな」
ただひたすら自分のことだけを話すことがプラスとしてとらえられるということはない。むしろマイナスのが多い。
「当然、順序よく隙間なく言葉を選んだんだよな?」
「それはもうテンプレートの質問は自己紹介で答え終えてたよ。そのせいで質問はありませんかって、急に終わりそうになったからそちらからの質問はないのですかって答えたよ」
ううん、本当に怪しい会社だな。
株式に上場はしてるが、ブラックに近い何かを感じる。
「楽しさばかりじゃないからな色々備えておけよ」
おうと最後のお年玉を与えて喜んでる姿を見るのが、まさか最後になるとは思ってもいなかった。
再会したのは、墓石前だった。
俺が忙しくて実家に帰れなくて2,3年が経った頃、急に母からの電話がきた。忙しそうだからと声をかけなかったと聞いて、俺は怒った。
俺が楽しく生きてこれたのはあいつに色んな話をするのが良かったからというのに実の母がそれを知りもしなかったのはイライらしく思わず声を荒げてしまった。
そして、葬式等は既に終わっており、そいつの実家に顔を出し、
「……すまんな」
墓石の前にくることができた。
「俺がもう少し忙しくなくて、お前のところにも顔を出せばよかったのかもな。いや、俺は関係ないか……」
……わからないな。
死因は過労死だそうだ。
ニュースに載るレベルのもので、俺はそれでさえも気づきやしなかった。
兄ちゃんと呼ばれてたことをただ恥じることしか自分を見れない。
忙しくて バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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