契約の代金

バブみ道日丿宮組

お題:素晴らしい接吻 制限時間:15分

契約の代金

 自分の家が特殊だって気づいたときには遅いんだね。物語の主人公って特別な環境に置かれるんじゃなくて、勝手にされるんだ。

 こんなひどい話なら、色んな物語の主人公はもっとわがままにしていいんじゃないのかな。私は私の方法でなんとか物語の主人公になりたくはない。

 だから、なかったことにしようと思って数時間。

「ねぇ、素直に命令を聞いてはくれないの?」

「えぇ、そういう契約です。他の使い魔は知りませんが? 私たちの種族はいかんせん『そのこと』で力を得るものです」

 妖怪の血を受け継いでるという青年は意地でも自分の方向を変えない。澄んだ瞳はこちらの全てを見透かされそうでちょっと直視できない。

「それとですね、一番最初にキスをなさったのはあなた様でございます」

 忘れようとしてた『そのこと』を青年は口にした。

「そ、そうね? そうかもしれない」

 まさか……ぬいぐるみにキスをしたら、男の人が出てくるなんて思うわけないじゃない。しかもプレゼント、もらいものへの挨拶のつもりだったのんい!

「……やっぱりもう取り消しも無理なのよね?」

「はい、代々決められてます。お嬢様の腕には既に印が」

「……そう」

 代々ね……こんな怪しい社会がうちの中にあるなんて知らなかった。

 やたらお爺ちゃんが笑顔でプレゼントしてくるからろくなものじゃないんだろうって思ったんだけれど、

「あ、のさ」

 もしこんなことになるんだったら、

「いらないという行動は残念ですができません」

 という考えを断ち切られた。

「もとより50年周期で我ら一族と共に夜を歩くのが血筋として決められてますので、以前の御当主様が行わなくてもいずれはこうして目の前に現れたかと」

「は、はぁ……そうなんだ」

 違うぬいぐるみを抱きしめて距離を置くのだけど、困ってることには変わらない。

「お嬢様の唇次第で、わたくしはいかようにも動きます。ですが、夜はわたくしと一緒に歩いてもらいます」

「こ、交換条件ってこと!?」

「そういうものに近いかと」

 彼がなんでもしてくれる代わりに、私は彼とキスをしなきゃいけないのか……。

「キスに何か意味があるの?」

「はい、そこにエネルギーがあるため。ないと夜にも差し支えることになります」

 命令ができるけど、夜に影響がでるってことは……、

「絶対にしなきゃいけないじゃない……」

「はい」

 笑顔で返事されると対処に困るなぁ……ほんとどうしよう。

「まずは、今日の分は頂きました。なので」


 一瞬のできごとーー私は彼に身体を抱かれ、夜の空へとかけていた。

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契約の代金 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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