ぼくら

バブみ道日丿宮組

お題:哀れな狐 制限時間:15分

ぼくら

 狐に恩返しを受けることになったのは5年前。

 それから毎日のように狐はぼくの近くで生活してる。

 帰って欲しいと願うのだが、狐はそうとはしない。これは使命であり、やり遂げることだと目を焚き火のように燃やしてた。

 狐がいなくなったとしてもまた別の狐が現れ、何かを僕に残してく。その代わり映えは狐の努力なんだと数年後気づくことになるがこの時のぼくはただただ驚くだけだった。

 子どもの頃、確かに僕は罠にかかった狐を助けたことはあるけど、別に恩返しを望んで助けたわけじゃない。

 誰かが助けなければそのまま熊に襲われるだけだったのをぼくが気まぐれに手を引いただけ。

 ぼくはそんな狐に何を望めばいいのかわからない。

 哀れにさえ思う。

 狐はきっとぼくを救世主か何かだと思ってる。

 でも、違うんだ。

 ぼくはそんな大層なものじゃない。

 熊の頂点にいた熊だ。

 狐にそのことを伝えても、信じてはくれるがそれでも助けたことに違いないと手をつくし続ける。

 

 そんな毎日が続いたからか、ぼくは狐と暮らし始めた。

 一緒にいることがきっとぼくが狐にしてあげられることなんだと気づいた。それが愛なんだと気づくことに長い時間がかかってしまったが、告白したのは間違ってなかったとウェディングドレスをきた狐を見た時は思った。

 子どもは数年後に生まれて可愛らしい女の子に育ってった。

 髪の色は狐の持つ純白、そして瞳はぼくに似た赤。性格は獰猛で、鬼の生まれ変わりと園内で騒がれた。

 

 ーー熊と狐の子が鬼とは随分な皮肉っぷりだ。

 

 ぼくはかつての失敗から狐を作るなと子どもに教えた。

 子どもは素直にその言葉を聞いて、群れの中にルールを作った。そのおかげもあったのか狐は現れなかった。また熊が現れることもなかった。それは圧力という子どもが鬼と呼ばれる眼力のおかげもあるかもしれない。

 園内の飼育員からは感謝された。園内といわず、地区内でも争いごとがなくなってると。

 そんな馬鹿な話があるものかと狐に話したら、かつて熊だったものたちから最近求婚されることが後を絶えないという。

 今頃になって熊が人に戻るのかと笑いながら狐を撫でると猫のようにじゃれつくのでまた子どもが増えた。

 そうしてぼくらはお互いを知って、人間へとなった。

 

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ぼくら バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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