妻を育てる

バブみ道日丿宮組

お題:ドイツ式の勇者 制限時間:15分

妻を育てる

 勇者育成学校。

 その育成指導官に任命されたが、

「お前たち、別に俺の講師いらないだろ?」

 実技、魔法適正は全員色鮮やかというぐらいに施設を壊しかねないほどのものを秘めてた。

「先生そんなこといったって、僕たち勉強できないからコレ以外やることないよ」

 一番才能があると睨んでたドイツのお嬢様が声を代表してあげる。

「君は俺にみっちりしこまれたはずだが」

「ははは、バレてるか」

 記憶を改ざんする魔法でも使ったつもりだったのか苦笑いをするドイツのお嬢様に生徒が次々と群がる。

「ずるい! お兄さんに個人トレーニングさせてもらったなんて聞いてない!」

「そうだ、そうだ! 不公平だよ」

 みんなが暴れるものだから、いい匂いが風にのってくる。

 甘酸っぱい乙女の匂い。

 特にドイツのお嬢様の匂いは強烈。勉強を教えるときもなんど魔の手に堕ちそうになったことやら。それを知ってか、わざと誘惑のような色目を使うからたちがわるい。

 何にしてもここは学校だ。

 講師が生徒に手を出したとなれば、それはもう……いろいろな機関に……いやドイツのあのおっさんに文句を言われるには違いない。

「先生はフィアンセだから、当たり前よ」

「親に決められただけだろう? それにーー」

 あと何年後の話だ。

「えーはじめて聞いたよ。その話も!!」

 年頃の乙女たちは恋バナに夢中になるらしい。

 しかたないので、施設の敵レベルを高難易度に設定した。

「ほら、お前たち発散するなら、練習をしながらにしなさい。あとで一人ひとりきちんとアドバイスするから」

『ほ、ほんと!?』と目を輝かした乙女たちは我先に、我先にと大ボスに向かって様々な秘技を放ってく。データは次々に俺のログに記録されてく。傾向、趣向、癖などもついでに計算する。

 この魔法技術があるから、俺が講師になれたわけだが……。

「なんで女子校なんだって、顔してるわね?」

「お前はいかないのか?」

 周囲を確認するとドイツのお嬢様しか残ってたなかった。

「僕のデータは調べるまでもないでしょ?」

「……そんなこといっても成長はするもんだろ?」

「も、もうえっちなんだから!」

 もじもじと身体をくねらせるので、

「いいから、行け。いかないとお前のお父様に言いつけるぞ」

 きちんとフィアンセなら指導できるだろうというのがおっさんの言いつけだからな。

 全く……自分の妻になる人を自分で指導して魔王に立ち向かわせるだなんて、親心がよくわからないよ。

「わかってるって!」

 ちゃんとみててねと両手でハートマークの魔法をつくるとこちらへと飛ばしてくる。

「……はぁ、やっと静かになった」

 施設の奥の方でどんぱちと眩しいのはこの際めをつぶることにしよう。

 魔王も可哀想なものだよな。

 人材不足で勇者vs魔王の大会に出てこれないっていうんだから……まぁこちらも乙女の予備軍を育てないといけないからあまり変わらないか。

 

 死に限りない殺し合いの大会ーーそれが唯一俺たち人間と魔族が共存できてる理由。


 お互いにお互いを利用しつくす。

「……めんどくさ」

 活躍なんて昔しなきゃ良かったよ。

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妻を育てる バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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