姉とぼく、そして弟

バブみ道日丿宮組

お題:楽しいうどん 制限時間:15分

姉とぼく、そして弟

 力強く生きてという姉さんの願いを無視して、ぼくは命を浪費し続けた。

 一族の未来なんてしったこっちゃない。ぼくには姉さんが全てで、姉さんがない生活なんて考えられなかった。

 大体長男に全てを押し付けようとする考えが間違ってる。弟だっていいじゃないか。なんだって一番最初に生まれた男を強い人間にする必要がある。

 そのしきたりのせいでで長く姉さんは男として教育され、生きるように命令されてた。ぼくが生まれてこなければどうなってたかわからない。もしかしたら本当に男として運命を定義付けさせられたのかもしれない。

 ぼくが幼稚園を出る頃には姉さんは高校生で女性として生活することを許されていたけど、その自由は不可能だった。コシのあるうどんのように一度ついた味は消えなどはしない。

 突如として男が女に変わったのだ、好意を寄せてたもの、嫌悪したものの想いは文字通り重くのしかかる嫌なものへと変わった。

 まずクラスメイトによる陰気な悪口は消えなかったし、他にも地味な肉体へのいじめもあったと聞く。

 姉さんはぼくを迎えに来るとき頭に傷があっても『大丈夫だから』と笑ってた。

『男の子として強く育ったから大丈夫』と笑う姉さんを見てるのは辛かった。

 その笑顔が強がりなんだなって気づいたのは、小学生になった時。

 その頃には姉さんはもうベッドの上から動けなくなってた。医者の診断は衰弱。無理な行動や、ストレスが原因だといってた。

 父さんたちは呆れ顔で姉さんを見つめてた。まるでいらないおもちゃを見る汚い目立った。

 ぼくはそれから親を親と思わなくなった。

 たった一人の家族は姉さんただ一人なんだと認識するようにした。

 中学になっても、ぼくは毎日親の言うことを無視して姉さんの側にいた。ぶっちゃけ成績も中、運動も悪くない。評判はむしろ後に生まれた弟の方がいい。

 だけど、ぼくは気にしなかった。

 学校であいつはできないやつだと言われてもぼくは言われるままでいた。姉さんが受け続けたストレスはこれ以上に不快なものだ。

 僕のせいで今まで不自由だった姉さんには幸せになって欲しい。

 その手が徐々に細くなってくのは怖かった。

 ここからいなくなってしまうんじゃないかって本当に怖かった。


 だから、ぼくは姉さんがまた笑って外を歩けるように医学へ道を進めることにした。


 幸いなことに父さんたちはその方向に文句をいうことはなかった。彼らの目にはもうぼくはなく弟しか眼中にないらしい。

 失敗作。

 そんな風にもしかしたら思ってるのかもしれない。

 それでもいいさと、僕は数年後医大に入学し、卒業して姉さんの専属医になった。


 今では昔のように笑ってくれる。

 小さな個人の病院で。

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姉とぼく、そして弟 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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