兄と妹のこと

バブみ道日丿宮組

お題:死にかけの足 制限時間:15分

兄と妹のこと

 何も問題はないと医者は言ってた。もちろん家族に足が動かなくなる病気を起こした人物はいない。あるとしてもアルツハイマーが歳でぼけとして発病したり、事故にあったりなくなったりとそんなごく一部がおかしくなることはない。

「お兄ちゃん、大丈夫?」

「別に死ぬわけじゃないから、毎日こなくていいんだぞ?」

 妹は散らかって着替えをまとめて洗濯物として洗面所に持っていった。

「認定されてるんだから家族が支えなきゃいけないでしょ? あと私たちは本当に家族なるのはこれからでまだ親戚の人を説得しなきゃ」

「あぁ、そうだな……うん」

 妹は、本当の妹じゃない。

 小さい頃から身体の一部がなぜかパソコンにエラーが発生するように動かしづらくなったり、痛くなったりとする。

 何度もMRIなど脳を調べても、身体をスキャンしても原因は不明。

 何かは絶対あると薬だけは飲まされるモルモット。そんな僕は家では厄介者だった。せっかくの息子がこんな身体じゃと親は若干ノイローゼ気味になって、養子をもらった。

 それが妹だった。

「でも、僕なんかと一緒になっていいのか? 学校にかっこいい人とか優しい人とかいるだろう?」

 わざわざ死にかけてる身体を持った人物の伴侶とならなくてもいい。そこから導き出されるのは介護に疲れるという事実。

「もうこうやってあげてるのも10年じゃない。今でもお風呂に入ってるし、いろんなこともしたのはお兄ちゃんでしょ?」

 う、ううん、つい血がつながってないからと欲望に負けたのは自分だった。素敵な女の子が近くにいて、理性を保つには限界があった。

 そして僕らは繋がり、夫婦になろうと高校の時に決めた。

 今は妹は大学で、僕は部屋でライター兼デザイナーの仕事を身体が動く時に手伝ってる。知り合いのつてというか知り合いに見抜かれた力だとも言える。

 こういう状態だからこそ雇えたとも言ってた。ちょうどいい物件だぞと。

 仕事からもらえる報酬と、国からもらえる補助金というなの実験費はなんとか二人が暮らせる資金にはなってきた。

 両親には説明した。

 いずれそうなるんじゃないかと親は既に知ってたみたいだった。

 妹がきてから、兄につきっきりで親を見てなかったからと笑った。そこにはもうノイローゼ気味だった感情はなかった。はやく孫の顔を見せてくれと高校の最後の日に言われたのは今思うと呆れてしまう。

「妊娠何ヶ月目だっけ?」

「もうすぐ半年だね」

 お腹をさする妹の姿は変わったように見えない。

 お風呂に入ればまたわかるかもしれないが、ぐっと色々耐えた。

「おじさんおばさんがあとは頷いてくれるかだね」

「でも、もう僕たちは夫婦として国が受けつけた。認めないもないよ」

「そっか」

 あらかた片付けた妹が僕の座るベッドの隣に座った。

「こんなに私に優しくしてくれたのはお兄ちゃんがはじめてだったから嬉しい」

「何回いってるんだよ。こちらは返せるものなんてほとんどないってのに」

 優しく撫でると妹は僕に抱きついてきた。また衝動に襲われそうになったので、

「が、学校は楽しい?」

 と話題を変えようと努力するが、きっと反応してしまってるのは気づかれてるだろう。

「うん、本当はお兄ちゃんと行きたかったな」

「そうだな。文化祭ぐらいには顔を出すよ」

 やったという一声とともに、僕は妹に押し倒されてた。

 わざとらしく動かしづらい手を押さえつけて、

「ふふ」

 妹は怪しげな顔をして僕に口づけをした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

兄と妹のこと バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る