継承

バブみ道日丿宮組

お題:破天荒な強奪 制限時間:15分

継承

 命日、声を出してなくことはなかった。

 棺の中にあるのはただの人形で死体ではない。

 そんなものに涙を流せるほど私は人ができてなかった。

 

 父が死んだと聞いた時、まず疑った。

 あんなにも世間を騒がした怪盗があっという間に死ぬというのは考えられなかった。もちろん、親戚一同は怪盗である事実は知らない。

 それは私たち一族の掟で、分家には伝わってない。伝わってるのは生まれてくる子どもは必ず本家のアシスタントとして行動する。秘密を暴露した場合は後を追う。

 そんな古びた言い伝えだった。

 だが、しきたりはしきたりとして今の今まで守られてた。

 私の隣には、1人の男の子。

 その子がしっかりと私を守ってる。実は初恋相手でもあったりするけど、彼は泣いてた。お父さんが死んだという事実を真に受けてた。

 この会場に入る前に説明はしたつもりであったけれど、人形が人形には見えなかったようだ。

「……いこう」

 私はその手を取って、死体が置かれた居間から離れた。

 入れ替わるように親戚たちが入ってその顔を見てく。

 誰もが涙を流し、言葉をかけてく。

「……」

 居間を出る前に母と目が会い、一枚の手紙を渡された。

 この屋敷でセキュリティがきっちりしてるのは父の部屋で、私は網膜センサーに自分の目を通し相棒を中に入れた。

 すると相棒が声を上げそうになったので、すぐに口を抑えた。

「やっぱり生きてたんですね。昨日はここにいなかったはずなのに」

 いつ戻ってきたのだろう。しかもこんなに人が大勢いる中、バレないようにここまで入ってくるなんて至難の業だ。

「タネは自分で考えるものだと教えただろう」

 そういって父はこちらへと手招きする。

「その手紙をもらったということは次はお前が次の当主だ」

「当主? お父さんが生きてるのに?」

「伝説の怪盗であっても歳には勝てないものだからね」

 ぱちんと指をならすと、相棒の父。

 つまりは、父の相棒がどこからか影のように出現した。

「これから二人には本格的に稽古をつけてもらう。そして奪われた家宝を集めて欲しい」

 そういって父は手紙を開封するようにいってきたので、中身をみてくる。

 たくさんの絵画、置物などの写真があった。

「それはわたしが屋敷にいなくなった時になくなったものだ」

 こんなにセキュリティがあるのに? と不思議に思うと、

「犯人は分家か、それになりすました悪だ」

「そう彼の言うとおり、悪用する輩が強奪したといっても過言じゃない」

 伝説の怪盗、それは人に災いをもたらすものを盗み出し管理すること。それは犯罪であっても、これからの未来を守るためのこと。

 そこまで聞いて、私の相棒は、

「娘さんを守れるようになりたいです。お父さんのように強く」と熱い目を向けてた。

「うん、いつか二人が結ばれるためにもね」

「な、なにいってるのお父さん!?」

 わたわたしてる間に、相棒の彼に様々なものが手渡されてる。

 それはこの屋敷を制御する反応装置。

 つまり、ここの部屋にも入れるようにする機械だった。

「お前の決心が覚悟としてあるなら、すぐに身体に埋め込む。わかってると思うが、」

「逃げたり、反攻したら生命はないんでしょ?」

 相棒は笑った。

 そして私の頬にキスをして、

「大丈夫、フィアンセは守るから」

「そうだったな。お前にはそれも期待してる」

 3人が笑う中、私は熱を冷やすのに必死だった。

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継承 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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