遅い到着

バブみ道日丿宮組

お題:遅すぎた稲妻 制限時間:15分

遅い到着

「ごめんね、私が足を引っ張ってばかりで……」

「そんなこと言わないで、あなたが前線を維持しててくれたからみんな大丈夫だったんだよ?」

 私が支える彼女の身体はどんどん冷たくなってる。

 力を暴走させて、辺り一帯を暴風雨にした影響もあるがその爆心地として自分の心臓の血流をフルに使ったんだ。

 魔法のような超能力ーーそれは人間の血と同じでどんな優れた能力であっても限界値がある。メリット、デメリットがはっきりしてる。

 だからこそ、能力が把握されると厄介なことになる。

「せっかく……いいペアだったんだけど、あなたの雷雲にはあたしはなれなかったみたい」

「そう……かもね。稲妻は雲を突き抜けちゃうから、きっと相性が悪かったんだよ」

 私の力は稲妻のように早く動けること。その代わり思考は遅れてくるから、予め脳に電気信号を入れておかないと早すぎる動きに脳が反応しない。

「あっちは雨降らしてないから、大丈夫。あっちには緑神さんもいるから、敵も容易に侵入できない」

 緑を操る植物人間。

 話したことはないけど、そんな援軍も着てくれてたのか。

「……それだけここは不利な状況だったんだね」

「たくさんを助けたいって気持ちがいけなかったのかも……ね」

 儚い笑顔に赤い血が雨と一緒に流れてく。

「あなたが死んだとしても私は忘れない。少なくともここで助けた子どもたちは、私たちを忘れない。あなたの力を受けたんだ。同じ力を覚醒させる子たちだって現れるはずだよ」

 力は周りに影響を与える。

 人が誰かに文字の書き取りを教えるように、力を見て感じると力を得る。因果はそうできてる。

「最後にあなたの力であたしを取り込んでくれないかな」

「……とても痛いよ? それに取り込むんじゃなくて消しカスとして私の中に生き続けるだけ」

 助けられなかった仲間が他に利用されないように政府が私に任命した1つの仕事。仲間の消去と記憶。稲妻の力で脳に書き込んでく。

 本部に戻って、それらを全てデータ化してく。

 相手がどんなものであったかも全てを共有してく。

「みんながあたしの記憶で助かるんだもの。今よりずっと楽になれるから」

 そういって彼女は意識を失った。


 私は、少し離れると彼女を貫く雷鳴を脳にイメージし身体を変化させた。


「……ありがとう」

 再び私の姿に戻って言葉が漏れた。

 彼女との過ごした日々も脳内に次々と溢れてく。

「隊長、仲間を終わなければいけません」

「わかってる。火の能力者を先頭に進めて役に立たないから」

 はいと後続部隊が彼女が残してくれた道へと進んでく。

「……大丈夫。私も長くない」

 脳のキャパシティには限界がある。

 心臓よりは長く持つだろうが、いずれパンクし私は脳死する。

 その時、誰が私の記憶を持つのだろう。

 そしていつこの戦いが終わるのだろう。

 手を閉じて、開いても答えはでなかった。

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遅い到着 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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