浮気してる人

お題：去年の別居 制限時間：15分

浮気してる人

　彼女が浮気をしてた。しかも相手は既婚者。W不倫ってやつだ。

　僕が単身赴任で別居してる間に、よいしょしてたらしい。

　彼女のため、未来の子どものたま、明るい未来のために頑張ってた。辛い仕事だって、これから待つきらびやかイベントに比べてたら大したことない。

　笑い飛ばしてしまえばいい。

　浮気に気がついたのは、出張からの帰宅後、僕の部屋のレイアウトが少々変化があったからだ。いつもお気に入りのぬいぐるみを抱きながら眠る僕は、ぬいぐるみの置き場所というのが存在してる。台座にでかいくまさんがどーんと姿を見せるのである。これは部屋に入った人がまっすぐに視線を集めるから、すごくいい配置。

　そういうのはとりあえず置いておいて……レイアウトが変わってたのは、ぬいぐるみだけでなく、パソコンデスクでコーヒーを置くためにある特別なアーム。それが完全に後ろに行ってた。モニターの後ろにあるそれは無意味だろう。

　そして知らないシャンプーがお風呂場にあった。探してみれば、見知らぬ歯ブラシが大事そうに仕舞われてた。友だちが泊まりにきたときに置いておいたんだろうかとも思ったのだが、それだったらいつもチャットツールで連絡がくる。部屋を使っていいかどうかっていう。

　ということ、浮気してるかもしれないという塩梅になったのだ。

　盗聴機をベッドルームにしかけて、なおかつ小さなビデオカメラも設置した。ボタン一つでスイッチがオン・オフになるすぐれものだ。怪しい時間に起動しよう

　あとは連絡だけだ。帰る日時はいついつになるから、と。

　実際にはそれよも前に変える予定だった。

　それを隠した。

　チャットを送り、盗聴機を起動してみれば、その予定が入ってきた。明日は完全にフリーだから、大丈夫。そんなものだった。

　これで決定的証拠が取れる。

　少し楽しくなってきた。悲しいはずなのに、さっさとおっぱじめろと羽織りたくなった。

　弁護士とともに家の前で待機。

　性行為が始まるのをまって、突撃！

　彼女は、男の陰部を受け入れてるところだった。

「待って、待って、違うから！」

　彼女のいいわけがはじまった。今回がはじめてはじめてだからと連呼する。

　そんなことに興味はなかった。

　浮気という事実がここにあるという方のが大事だった。

　だから、離婚する。慰謝料を請求する。もちろん、男の方にもだ。相手の奥さんには弁護士さんからすでに連絡が来てる。

　積みということだ。

「さようなら」

　冷めてしまった心は、未来の光よりも恐ろしい闇に染まってしまった。