第389話 地竜の領域と、原初の草と、冷気

 獣人の村が落ち着いているので、そろそろ3体の魔王をどうにかしたい。

 手始めに地竜を選んだ。

 地竜は草食で大人しいと聞いている。

 いきなりは仲良くはなれないから、まずは挨拶からだ。


 地竜の領域は森で驚くほどにモンスターがいない。

 地竜は草食のはずだが、どうなっているんだ。


 調べようと思う。

 樹や草が食べらていてる痕跡が所々にある。

 草食なのは間違いなさそうだ。


「こっちを見てみろ」


 一緒についてきたクリアが何か見つけたようだ。

 案内されて行くとそこは骨の墓場だった。

 多数のモンスターの骨が存在している。

 それはまるで骨の博物館だ。


「地竜が殺したのかな」

「見たところ草食のモンスターの骨しかない」


 食われたのなら、まる飲みだろうから、骨は粉々になっているはずだ。

 その痕跡がないということは殺してここに死骸を放置した。

 その推測で当たりかな。

 肉食のモンスターがいないのは餌となる草食のモンスターがいないからだ。


 地竜の生態は草食で草食のモンスターを殺す。

 いや人間も殺すリストに含まれているに違いない。

 でないと、エルフと獣人がこの地に入らない理由がない。


 大人しいはずだが、やはりそこはモンスターか。

 そして、俺は家の残骸を見つけた。

 エルフの家ではない、獣人の家だ。

 焼け焦げた跡がある。

 火事になったかあるいは地竜のブレスでやられたか。


「獣人の家のようだが」

「獣人は際限なく増えるから、はみ出し者が禁則地に住もうとする。大抵はそこで死んで終わりだな」

「魔王は縄張りに厳しいのだな」

「モンスターだから、仕方ない」


 焦げた人形を拾う。

 過去の悲劇は仕方ない。

 今後、悲劇が起こらないようにしないと、いけないな。


 そのためには魔王と話し合って、取り決めをしないと。

 地竜の縄張り深く入る。

 樹も草も全て食べられて、死の広場になっている所に出た。


「地竜は最近ここを餌場にしたらしい」

「根こそぎだな。森が泣いているようだ。エルフからしたらこの森の利用の仕方は許せない」


「地竜は頭がいいと思うが、植林するほど器用ではないらしい」

「森がこんな状態になってしまえば、復活に何年掛かることだろう」


「地竜の寿命なら気にしないのかもな」


 クリアが種を蒔き始めた。


「何の種?」

「原初の草だ。エルフの神話によればこの草が世界に初めて生えた。そこから、色々な植物や動物が生まれたとされている」


「ふーん、たぶんこういう場所で一番最初に生えてくる植物なんだろうね」

「そうだな」


 それからいつの間にか別の植物に切り替わるのだろう。

 そこから神話が生まれたんだな。

 エルフはこの植物を神聖視しているらしい。


「俺も手伝うよ」


 二人して死の土地に、種を蒔いた。

 そして魔道具で水を出し掛ける。

 ふう、いい仕事をした。


「そう言えば虫もいないな。いびつな森だ」

「エルフも傲慢な所はあるが、虫を全滅させようとかは考えない。ある程度自然に任せる」


 熱風が吹いてきた。

 これは堪らん。


import magic


mp = cold_air() # 冷たい空気

str=input('入力したら終わり') # 入力したら終わり

mclose(mp) # 魔法終わり


 速攻で魔法を作る。

 魔法で冷気を出してガードする。

 周囲の気温をチェックすると50度を超えていた。


「自然現象ではないな」

「おそらく地竜のブレスだろう。これで虫を殺したのだな」

「天候すら操るか。俺も出来るけど、さすが魔王だな」

「この高温では植物も痛む。本当に傲慢な奴だ」


「エルフは殺虫剤とか使わないの?」

「ある植物の汁を吹き付けることで虫を退治する。植物にも優しいし、人にも優しい」

「そういう知恵をエルフはたくさん持ってそうだ」

「まあな」


 熱風が止んだ。


「地竜はここの孤独の王様だな。退屈だったり、寂しくないんだろうか」

「草食のモンスターを殺したり、熱風を吹かせたりして暇をつぶしているんだろう」

「会話する楽しさとか教えてやりたいな。簡単なゲームとかなら出来るかもしれない。そうすれば生活に彩りが出て幸せになれるに違いない」

「それはタイトの考えだな。モンスターである地竜はそんなことは思わないさ」


 そうだろうか。

 俺は今まで見たことを考えていくつか交渉の余地があるなと思った。

 話合えれば分かり合える。

 そう思いたい。

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