第386話 肥料と、糖類と、料理

 獣人の全ての村を回って治療行為。

 それで、その次は焼き畑農業を指導した。


 種はもちろんエルフに分けて貰ったのは言うまでもない。

 焼き畑は1回のみで次回からは肥料を作らないとな。


 魔法は召喚魔法だと言った。

 それで、食料として一番召喚し易いのは何か。

 糖類だ。

 これは花の蜜にも含まれているし、草や木の中にもある。

 ただし、のべつまくなしやるとえぐみがある砂糖しか出来ない。

 不純物が含まれているわけだ。

 精製しようにもブドウ糖と果糖では違うし、例えば果物の糖分と言っても何種類もある。

 同じ種類の物から精製すれば、味の良い物ができるのは分かっている。

 だが、それだと資源が限られるから、獣人の人口を考えると食べつくしてしまう。

 渋みやえぐみは我慢してもらうよりない。


 さて魔法の時間だ。


 まずは肥料生成。


import magic


mp = fertilizer_make(20) # 20キロの肥料を作る

mclose(mp) # 魔法終わり処理


 魔法は召喚魔法だから、手近な肥料の材料から作られる。

 俺のイメージではモンスターの死骸だ。

 死骸が細かく砕かれて、腐る。

 そして、醗酵して肥料になる。

 モンスターの死骸さえ用意すれば問題ない。

 食える肉を取ったあとの残骸でも良い。


 肥料生成の魔道具は獣人に喜ばれた。

 捨てる部位を放っておくと病気の原因になると経験で知っているらしい。

 穢れとして、穴に埋めて土に返すべしと掟でなっている。

 それが時間も経たずに土になるのだから面倒がない。

 彼らも穴掘りは嫌な作業だったようだ。


「死骸から作った聖なる土を畑にまくんだ。ただし作物から少し離れた所に撒け。作物を植える前に撒いておくとなお良い」

「仰せのままに」


 次は砂糖作りだ。


import magic


mp = sugar_group_make(1) # 1キロの砂糖を作る

mclose(mp) # 魔法終わり処理


 出来た砂糖を毒感知を掛けてから舐めてみた。

 うわっ、えぐい。

 これをどうやって美味く食うんだ。


 獣人に渡したら、鍋で煮始めた。


「苦い奴や渋い奴は茹でてアクを抜いたら食えます」

「あく抜きしてみるか」


import magic


mp = sugar_group_make(1) # 1キロの砂糖を作る

remove_harsh_taste(mp) # あく抜き

mclose(mp) # 魔法終わり処理


 舐めてみた。

 幾分ましになったな。

 これなら食えるレベルだ。

 ただ砂糖を食えというのは問題だ。


 彼らに渡したら、樹の中綿みたいなのを砂糖で煮始めた。


「意外にいける」


 食ってみたら、甘い煮物になっている。

 樹の綿には味がないんだろうな。


「魔王様、お気に召しましたか」

「隠し味に塩を少しいれるともっと美味いぞ」

「塩は貴重品です」


 分かった魔道具をくれと言うんだな。

 まあ前に作ったのがあるから問題ない。

 塩の方は雑味がない。

 塩化ナトリウムを召喚しているからな。


 ミネラルが含まれていないので不味い塩だが、食う分にはこれで十分だ。


「砂糖と塩で、今まで敬遠してきた食べ物も食べられます」

「葉っぱも食うんだぞ」

「分かってます。掟で一定量の草を食べることになってます」


 掟も馬鹿にできないな。

 たぶん経験則でそうなっているのだろう。


 あとは家だな。

 獣人の家は木の柱と葉っぱで出来ている。

 家の周りに排水溝があるのは良く考えたと言いたいが、お世辞にも住みたい家ではない。

 獣の毛皮は豊富にあるようで、雨が降ると油を塗った毛皮を屋根に掛ける。


 寒い時は何枚も毛皮を掛けて過ごすようだ。

 虫の類が凄いので燻す作業は1日に一回は行われる。


 燻すのに使う草はたぶん殺虫効果があるんだろうな。

 レクティ辺りにもって帰ってやったら、喜びそうだ。

 枯れてない植物を入れられる収納魔法があれば、よかったのだが。

 リッツの頑張りに期待しよう。


 俺は獣人に植物のことを聞いて、空いた時間で図鑑を作り始めた。

 エルフに聞けば、たぶん図鑑を持っていると思うが、畑が軌道に乗るまでの時間潰しなのだからこれでいい。

 畑の作物は早いのは、20日で収穫できるらしい。

 一ヶ月も滞在すれば、十分だと思われる。

 それまでの空いた時間の気分転換とかに、図鑑作りはちょうど良い。

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