第323話 宴会と、試合と、内部から
「トセイソニチリ・イミヒランネ・セリイチトイ・カイチソク・モイ・クラテ・カラ・モラヒイ」
宴会を楽しんでいたところ、ディッブの戦士にそう言われた。
「リッツ、何て言っている?」
「特使どの一手ご教授お願いしますだと思う」
「余興程度なら良いだろう」
「ニカ・テラナリシ・コイ・ミニソイ・ニハ・ニカ・テチト・マナトカ・ハラス・イミカイスカチニミモイミカ」
リッツが翻訳する。
「ラノ」
了解と相手が言って、試合をすることになった。
「では始め。ハニキクカ」
上級戦士が審判役を買って出て、始めの合図が掛かった。
「【魔闘術】」
俺は魔法で再現した魔闘術を行使した。
互角だな。
俺の方が地力はあるが、戦闘技術の差で互角になっている。
「【魔闘術エキスパート】」
#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
#include <conio.h>
extern MAGIC *magic_select_mana_all(void);
extern void magic_circulation_whole_body(MAGIC *mp);
extern void mclose(MAGIC *mp);
void main(void)
{
MAGIC *mp; /*魔法定義*/
mp=magic_select_mana_all(); /*魔力全てを魔法として登録*/
while(1){
magic_circulation_whole_body(mp); /*体全体を循環*/
if(kbhit()) break; /*何か入力されたら止める*/
}
mclose(mp); /*魔法を終わる*/
}
こんな魔法だ。
俺の体は光輝いた。
思考加速もしているので、相手が止まって見える。
攻撃を全て軽く捌き、軽く一発いれる。
相手がノロノロと飛んで行く。
俺は魔法を停止した。
相手が物凄い勢いで飛んで行って、地面にこすれて土埃を上げた。
やりすぎたか。
「そこまで」
マイラ達が拍手する。
それを見てディッブの戦士も拍手した。
強い奴は敵味方かかわらず尊敬するようだ。
ディッブ人らしい。
俺も俺もと、試合を申し込まれたので、受ける。
魔闘術は便利だな。
近接戦闘に限って言えば強い部類だ。
マイラとリニアには敵いそうにないけども。
「こっちも技を見せてやる」
上級戦士がそう言って胸を叩いた。
「拝見しよう」
「魔法を撃ってみろ」
「【電撃】」
軽い電撃魔法を放った。
「ふんっ」
上級戦士の拳が輝き、電撃魔法を砕いた。
「魔法殺しの技だ」
良い物を見せてもらった。
魔闘術エキスパートでも同じことが体全体でできそうだ。
トレンが寄ってきた。
「貴殿は何でもできるのだな」
「何でもは出来ないさ。死人を生き返らすこともできないし。時間も停止させられない」
「そんなことができたら神だな」
日本のゲームや漫画ではそれらの技は普通にあるんだけどな。
魔法がある異世界ならできそうだ。
生き返りはともかく、時間停止は無理そうだな。
俺は神には程遠い。
そんなものを目指してもいないけど。
「力に溺れる奴は足元をすくわれることが多い。力を追い求めるのはやめろ」
「闘貨をくれないか」
「他人の力でどうこうしたって、そんなのはメッキと変わりない」
「ではどうしたら」
「自分なりの答えを出せよ。結婚を回避するだけなら、出奔しても良い」
「国を捨てろというのか」
「下らない国ならそういう選択肢もありだと言ったまでだ」
「それは逃げるのと変わりがない。一度逃げた人間は負け犬に成り下がる」
「まあそうかもな。でも出奔を厳しい戦いとみて、飛び込むなら、ありじゃないのか」
「違う国に行くと習慣やら色々なことで悩まされるのは知っている。学園でも戸惑うことがしばしばだ。だが、そんなのは名誉ある戦士の戦いとは言えない」
「それは価値観の問題だな。俺だったら出奔に絡む問題は、名誉ある戦いだと思うけど」
「貴殿の柔軟さが羨ましい」
トレンの問題の解決策は見えた。
トレン自体が変わらないといけない。
ディッブ人社会が変わらないといけないのと一緒だ。
だが、生まれ持った価値観はちょっとやそっとでは変わらない。
ディッブで色々な人に話しを聞いてそれが分かった。
外部から強制的に変えようとするのではなくて、内部から変わろうとしないといけないんだ。
トレンと話してて、それが分かった。
分かったからと言って解決策はないけどもな。
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