第321話 貿易と、市と、ハーレム
貿易の窓口を作りたい。
細々ならすでに交易はある。
ただ、それは物々交換だ。
ちゃんとしたルールを作って大規模に交易したい。
ジェフトと会談の約束を取り付けた。
「交易したい」
ざっくばらんに言ってみた。
「すればいい」
「そっちは物を買うのに、このまえ贈った貨幣製造魔道具を使うといい。もっとも俺達が物を買う時も貨幣で払うけどな」
「物々交換じゃだめなのか」
「駄目だな不便だ」
「まあいいか。貨幣製造魔道具を使うのは大した手間じゃないからな」
「気をつけろよ。金を発行しすぎると信用がなくなる。もっとも金貨と銀貨は違うけど」
「そんな評判など気にしない。交易が出来なくなれば奪うだけだ」
そういう話になると思っていたよ。
ディッブとの境界の村はたびたび襲われている。
この辺りも解決したいところだ。
そろそろ、この分からず屋達に一発かましたいところだ。
俺の忍耐力も尽きかけている。
国境警備隊を組織すべきだろうな。
ディッブ人の戦士に負けない奴というと腕利きか、何か魔道具で戦力差を解決しないと。
ディッブと交易する商人も腕利きの護衛が必要だな。
ここまでして交易する必要があるのかちょっと疑問になってきた。
ジェフトと会談が終わり、リッツを呼び出した。
「上手い交易の仕方があるだろうか?」
「うーん、市を立てればいいよ。サバンナのディッブ人もよく市を立てているらしい」
国境で市を立てるか?
俺は考え始めた。
連絡方法さえしっかりしとけば問題ない。
通信の魔道具は簡単に作れるし。
市の警備は腕利きが要るけども、何とかなるだろう。
首都の森まで出かけることを考えたら容易いことだ。
「よし、リッツの案を採用しよう」
「俺とベークの商会に仕切らせてくれ」
「ベーク・アンド・リッツな。よし、いいだろう」
あそこは実質オルタネイトが仕切っている。
変なことはしないはずだ。
「やった。珍しい品は旨味があるぞ。交易品でウハウハだ」
「問題はディッブ人に匹敵する腕利きをどこからスカウトするかだな。護衛が要るはずだ」
「そんなの簡単だ。ディッブ人を雇えばいいんだよ」
リッツはディッブ人の手綱が握れると思っているらしい。
馬鹿なのか豪胆なのか。
いや両方か。
でもディッブ人を雇うという発想は悪くない。
ディッブ人の強みは個人戦闘力だ。
ディッブが他所の国に売り込むならこれはありだろう。
ただ、善悪の区別がつくかどうかだ。
犯罪組織に手を貸したりするととんでもないことになる。
ディッブの戦士はプライドが高いから、犯罪組織のボスぐらいだと、殺されて終わりなような気がする。
とりあえず試みとしては悪くない。
市の護衛としてディッブ人が雇えるかどうか試金石だな。
リッツは自信があるようだけど、奥の手でもあるのかな。
「どう運営するつもりだ?」
「ディッブ人の女戦士を雇うつもり。彼女らは化粧品とか好きだからそれで釣ろうと思う」
「そんなに上手くいくかな」
「化粧品なら失敗しても痛くない。それに彼女らは男に下だと思われているのが面白くないらしいんだ」
それは何となく分かる。
日本でも女性の進出は遅れていたからな。
ディッブ人の女性に意識改革を起こすという案は、それなりに使えるかも知れない。
「分かった。予算をつけてやる。しっかりやれ」
「じゃあ、手始めに輸送路を作りたい。飛ぶ板の魔道具を貸して。ディッブ人の女戦士を雇って品物を運ぶから」
なんとなくリッツが賢く見える。
前々から計画してたのかな。
「準備がいいな」
「だって口実がないと、女戦士とお近づきになれないから」
賢いなんて考えたのが間違いだった。
是が非でもハーレム作りたいんだな。
そんなことだと思ったよ。
「ソレノが聞いたらなんていうか」
「いまいない彼女のことを言われても」
こいつ馬鹿だな。
レクティに知られるとソレノにも知られてしまうんだぞ。
レクティの地獄耳から逃れられるわけないだろ。
「ソレノに振られても俺は庇わないからな。男の情けで告げ口はしないけど」
「ハーレムやっている先輩に言われても説得力がない」
「俺のは不可抗力だ。集まってしまったんだから仕方がない」
「くっ、これが格差か。俺は集める人間なんだよ」
「まあ、ほどほどに頑張れよ」
リッツがディッブ人の女達を篭絡できるか賭けをしたい。
駄目だな。
篭絡できるに賭ける奴はいないだろう。
でも何らかの伝手はできるかもな。
それができるだけでもやった甲斐はあるだろう。
色んなパイプを持っておくのは悪い事じゃない。
そろそろ、俺達も大きく動いてみるか。
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