第308話 どこに行くのと、風でなぜ切れると、星の意思

 ゆっくりとした速度で家が飛んで行く。

 30人が暮らせる規模の邸宅に特攻をかけようとするモンスターはいない。

 平和な物だ。

 家を降ろせる場所は限られるので、途中で観光などができないのが、難点だ。


 飛ぶ板で降りていくのは出来るんだけども、高所恐怖症にはつらい。

 問題になるのはトイレ。


 そこで活躍するのが魔法。


char dirt[100000]; /*汚れ百万立方センチ*/

extern MAGIC *magic_make(char *target_obj,int target_size,int image);

extern void magic_delete(MAGIC *mp);

extern void mclose(MAGIC *mp);

void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 mp=magic_make(dirt,sizeof(dirt),IMAGEUNDEFINED); /*汚れを魔法として登録*/

 magic_delete(mp); /*汚れを消去*/

 mclose(mp); /*魔法を終わる*/

}


 それがこれ、大規模汚れ消去魔法。

 消えた物質がどこにいくか考えると、なかなか答えは出ない。


 魔法は基本的に召喚魔法だから、地中深く葬り去られているのかも知れない。

 宇宙に放出されて、降って来るとかは嫌だな。

 魔力消費量からすると地中の線が濃い。


 だが、謎空間にという説もありえる。


「何考えてたの?」


 リニアにそう問われた。


「魔法って不思議だなと」


 汚物の行く先だと、答えたくなくてやんわりとぼかして答えた。


「そうね。風で物が切れたりするのも不思議」

「あれは真空で吸い出して斬っているんだ。あれ待てよ。切れないよな」


 よく考えると切れない。

 俺は考え始めた。


「ええと【真空】。うん斬れない」


 試しに紙に真空をぶつけたが斬れない。

 空気が吸い出されて、紙に穴が開いただけだ。


「【風の刃】」


 今度はスパっと刃物で斬ったようになった。


 違いはどこにあるんだ。

 刃をイメージしているかどうかだ。

 真空の中に刃ができるのか。


 何の刃だ。

 真空に存在する物。

 魔力しかないだろう。


 魔力は体の中に重なって存在している。

 魔力で物を斬れたりするという話は聞いた事がないな。

 斬れるなら体がズタズタになっている。


 ああ、真空プラス魔力の刃が、風の刃の正体だ。

 真空にすると、魔力の性質が変わるのだろう。

 空気が鞘みたいなもんだ。


 面白い性質だ。


「何か分かったの?」

「風の刃は存在しない。真空と魔力の刃というのが正しい」

「真空という言葉は聞いた事がないわ。難しいのね」

「真空というのは物質がない状態だ。宇宙空間は真の真空とは言い難いが、まあ真空だと言って良いだろう」

「空の上は空気がないのね。なんで知っているの?」

「魔力にとって物質は鞘みたいな物らしい。真空にするとその性質を現す。だけど深く斬れたりはしない。物質に触ると刃の性質が無くなるからだ」


 何で知っているのという問いを誤魔化した。


「なぜ真空になると性質が変わるのかしら」

「えっと」


 またまた、難問だ。

 魔力は人間の感情というか精神エネルギーみたいなもので、色々な魔法に姿を変える。

 体の中にあるうちはニュートラルという状態がない。

 自然界にあるときはどうなのだろう。


 星の意思の影響を受けているのかな。

 星に意思があるとしたら面白い。


「たぶんだけど、星に意思があって空気にその意思が含まれるんだ」

「星に心があるの?」

「分からないけど」

「ちょっと待って」


 リニアは手を突き出して、神経を集中した。

 風が吹いた。


「凄い。魔法じゃないよね。どうやったの」

「星と共生してみたけど、戦いには使えなさそうな力ね」

「上手く使えば地形とかも変えられるんじゃない」

「そう上手くは行かないみたい。星は必要のない変化を好まないから。風は常に吹いているから許してくれたようね」


 星に意思があるなんて凄い発見だ。

 あんまり役に立たない発見だけども。


 風の刃、改め、真空魔力刃は良い攻撃だ。

 マイラ以外に見えないと思うからだ。

 威力が低いと思っていたけど、本質をつかんだいまなら、高出力の攻撃ができると思う。


 何にでも意味はあるらしい。

 ただ気がつかないだけだ。


 リニアは脳筋が入っているけど、意外に賢いかも。

 判断する元になる知識が足りないだけかも知れない。

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