第299話 魔法医と、麻酔と、魔道具

 夏休みが終わり、学園の催し物は、職業見学だ。

 今年は、セレンの希望で、魔法医の見学にいく。


「魔法医のレポートを書きたいというのは君達かね。存分に見学していったくれ」

「お世話になります」


 みんなで挨拶した。


「じゃあ、患者を入れてくれ」


 最初の患者はナイフで遊んでいるうちに手を切った男の子。


「痛いよう。縫うのは嫌だ。絶対嫌だ」


 何があったか分からないが、傷を縫われて前に酷い目に遭ったらしい。


「消毒からだな。消毒液を用意してくれ」

「はい」


 魔法医が診断を下し、看護婦が消毒液を用意する。

 男の子の手に容赦なく消毒液が掛けられる。


「うがが、ぐがぁ」

「【縫合】」


 とっても痛そうだ。

 魔法医は傷口を縫うと、男の子にウイルス除去の魔道具を使った。

 薬が塗られ、包帯が巻かれて治療は終わった。

 男の子は痛みの余りか、声も出ない。


 ウイルス除去の魔道具は良いとして、麻酔の魔道具があるといいな。

 魔法のイメージは湧かないので作る自信はない。

 別に現代医学の麻酔薬とか難しく考えないで良いのか。

 神経を伝達している科学物質や電気信号を遮断するイメージでやれば良いのかな。

 臓器を止めちゃうと大事になる。

 手足とかに限る必要があるな。


 これでも少しは楽になるはずだ。

 もっとも魔導師が使う完全回復なら一瞬で治る。


 魔法医に魔導師資格を取ってもらうのが良いのかもしれない。


 次の患者が入って来る。

 うわっ、腕の骨折だ。

 しかも骨が飛びて出てる。

 ええと開放骨折とかいうらしいな。


「君達、患者を抑えつけてくれ」


 患者を押さえる。

 腕を切断するようだ。

 何か薬を飲ませたようだが、患者は別段変わりはない。


「ぐぐぐっ、がぁぁぁぁぁ、ごぁぁぁぁぁぁ」

「【切除】【縫合】」


 患者は痛そうだ。

 難手術が終わった。

 魔法医って大変だな。


「少し質問していいですか?」


 セレンが魔法医に問い掛ける。


「構わないよ。何が聞きたい?」

「飲ませた薬はなんですか?」

「痛み止めだよ。大した効果はないが、飲ませないという選択肢はない」


「ウイルス除去の魔道具は必須ですか?」

「ああ、それが出来てから死亡率も下がった」


 セレンの顔が得意げになる。

 作ったのは俺だがな。


 セレンが更に専門的な事を聞いている。

 俺が聞いていても仕方ないな。

 麻酔の魔道具を作ってみよう。


#include <stdio.h>

#include <stdlib.h>

#include <string.h>


extern void mystery_magic_name_get(char *str);

extern void leg_inhibits_nerve_transmission(char *str);

void main(void)

{

 char str[256+5]; /*神秘魔法名の格納場所*/

 mystery_magic_name_get(str); /*神秘魔法名ゲット*/

 strcat(str,".body"); /*神秘魔法名に『.body』を連結*/


 while(1){

  leg_inhibits_nerve_transmission(str); /*足の神経伝達を阻害*/

 }

}


 これだと、患者本人が使う感じになる。

 本人に使わせるのは問題だな。

 患者の神秘魔法名を魔法医が使うのは、魔法医が魔導師でないといけない。

 魔導師が使うのならこんな魔法だな。


#include <stdio.h>

#include <stdlib.h>

#include <string.h>


extern void leg_inhibits_nerve_transmission(char *str);

void main(int argc,char *argv[])

{

 char str[256+5]; /*神秘魔法名の格納場所*/

 strcpy(str,argv[1]); /*格納場所に神秘魔法名をコピー*/

 strcat(str,".body"); /*神秘魔法名に『.body』を連結*/


 while(1){

  leg_inhibits_nerve_transmission(str); /*足の神経伝達を阻害*/

 }

}


 魔法医が使うのなら、効率が悪いが、簡易版のこの魔法で我慢しておくべきだろう。


extern void leg_inhibits_nerve_transmission(void);

void main(void)

{

 while(1){

  leg_inhibits_nerve_transmission(); /*足の神経伝達を阻害*/

 }

}


 腕版の魔法も作り、それを使い作った魔道具を魔法医に提供した。


 次の患者は尖った石を踏んで刺さってしまったようだ。

 早速、麻酔魔道具の活躍の場だ。


「どうだ痛くないか」


 魔法医が患者に確認する。


「平気だ。嘘の様に痛くない」


 傷口を洗い入って砂やゴミを洗い流す。

 縫って、ウイルス除去の魔道具を使って終わりだ。


「スムーズにいったな。是非、麻酔の魔道具を売ってくれ」

「商会の方で発売されると思うから買ってくれよ」


「痛た! 痛い!」


 魔法医が麻酔の魔道具を停止させたらしい。


「しばらくは魔道具を起動しっぱなしにした方が良いのかもね」

「商売上手だな。まあいいか。患者に吹っ掛けるだけだ」


 麻酔の魔道具は安く売らないといけないようだ。

 たぶん、神経痛の治療とかにも使われると思う。

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