第297話 姿隠しと、ニュートリノと、魔法の立ち位置

 まだか。

 アレグラジオン草はまだか。

 ネズミ達から伝言魔法は飛んでこない。


 この作戦も失敗かな。


「お客さん」


 マイラがそう言って虚空をナイフで薙いだ。

 上がる血しぶき。


 肩パッドを着けた男が一人現れた。


「よくぞ見破った。我は第二席ダイオード」

「姿隠しだろ。ネタは割れている」


「ふふふっ、ではこれはどうかな」


 薬品が一面にばら撒かれて、霧となった。

 毒ガスか。

 トイレが近くなるという欠点はあるが、毒対策はばっちりだ。


「目が痛い」


 霧に触れたセレンが目をこすった。

 目を封じるのか。

 だが、マイラには通用しないはずだ。


 マイラは動かない。


「駄目、流れが見えない。流れを遮断する結界を張っているの。空気の流れ、音、熱も分からない」

「流れを遮断する結界か。まずは【竜巻】」


 目が痛くなる霧を散らした。

 ダイオードはどこにいるか分からない。


「きゃあ」


 マイラから血しぶきが上がった。

 さっきのお返しらしい。


 このままだと犠牲者が出る。

 あれを試してみようか。


extern MAGIC *magic_make(char *obj,int obj_size,int imege);

extern void magic_manipulate(MAGIC *mp);

extern int mclose(MAGIC *mp);


char neutrino; /*ニュートリノ*/

char main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 mp=magic_make(&neutrino,sizeof(neutrino),IMAGEENERGY); /*ニュートリノを魔法に登録*/

 magic_manipulate(mp); /*魔法を動かす*/

 mclose(mp); /*魔法終わり処理*/

 return(neutrino); /*ニュートリノの情報を返す*/

}


 ニュートリノを操って情報を得る。


「【ニュートリノ】。そこか! 【電撃】」


 俺の魔法より早くマイラが動き、虚空を薙いだ。

 血しぶきが上がり、ダイオードが現れ、死骸に電撃が当たった。


 さすがの結界もニュートリノは防げなかったらしい。


「タイトから出た物凄い早いのが、感じられた」


 マイラはニュートリノの流れを感知したらしい。

 どこまで行くんだろ。


 ニュートリノ感知の魔道具をマイラは欲しがるんだろうな。

 マイラだったら渡しても良いか。


「さっき感知に使った魔法は魔道具にしてマイラに渡すよ」

「ありがと」


「どのような仕組みなのでしょう?」


 レクティが興味を示したようだ。


「うんと小さい粒で素粒子というのがあってね。それに感知させた」

「それはどのような結界も突き抜けるのでしょうか?」

「分からない。でも今回は上手くいった。壁とかも突き抜けるらしいよ」


「覗きが出来るな。是非、教えてくれ」

「最低」


 リッツの言葉にベスがさも軽蔑したかのように言った。


「たぶん、映像が骨格標本みたいな感じになると思う」


 透視するとエックス線みたいになると思うんだ。


「やってみなくちゃ分からないだろう」

「リッツがそれを研究するのは構わない。でも気をつけろよ。放射線とか扱うと、病気になる確率が高まる」

「辞めた。病気は嫌だ」


「魔法は危険なんだな」


 ベークが感心したように言った。


「今更だよ。火球の魔法でも人は殺せるし、水球でも窒息死させられる」


 コネクタの意見も正しい。


「物を作り出せるのも、病気や怪我を治せるのも、魔法ですわね」


 ラチェッタは優しい人らしい意見だ。


「力は力よ。それ以上でもそれ以下でもない。どのように使うかは人にゆだねられている」


 リニアがそう意見を述べた。

 これも正論だ。


「魔法は所詮道具よ。使えるものは使う。怪我したり失敗したりするのはそいつがドジなだけ。起こした事に落とし前はいるけどね」


 マイラらしい考え方だと思う。


「結論や考えを決めつける必要はないと思うな。生きていく間に感じた事や、思った事を、行動に反映させれば良い」


 俺はもっともらしい事を言ってみた。

 神がいるとしたら、どんなつもりで魔法を人に与えたのだろう。

 モンスターに対抗できない人間に対しての哀れみなのか。

 それとも、進化してほしいという願望か。


 魔法を突き詰めていくと、星すら破壊できるだろう。

 前世の文明もそういう核兵器みたいな物もあった。


 たぶん、答えはでないのだろう。

 道具には善悪はない。

 でも作るのをためらうような兵器みたいなのはある。


 文明としての滅びの因子みたいなものか。

 どんな文明でも常に含まれている。

 神はそれを打ち破る事を期待しているのか。


 まあいい。

 俺は俺として生きるだけだ。

 リニアの言葉を借りれば、それ以上でも以下でもない。

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