第289話 要塞と、奇襲と、顛末
リッツ達が待ち構える巨大な岩を利用した要塞に当たった。
鏡が多数置いてあり、ミカカ語クラブの生徒が常に動かしている。
まるでサーチライトを照らしている悪の要塞だ。
ぱっと見でいくつか欠点がある。
太陽の光を利用しているために、攻撃する方向が限られる。
死角が出来るのだ。
死角には多数人を配置してあるのが見て取れる。
要するに固定された大砲がある要塞だな。
砲台に真正面から突っ込むのは馬鹿だ。
魔法で盾を出せば防げるとはいえ、攻略は容易ではない。
死角から近寄るのも狙い撃ちされる。
それに鏡を2枚以上使うと、死角をカバーできるのを知っている。
リッツは温泉でそれを使い覗きをやろうとしていた。
今回も使うに違いない。
「パス」
「僕もパス」
「パスね」
「パスですわね」
4人の意見はパスで決まった。
「でも置き土産は良いかも」
「うんうん、賛成」
「奇襲からの一当てなら」
「ですわね」
木に登り、紐の先に魔道具を付けて、ブランコみたいに弧を描かせた。
頭上は警戒していないのだろう。
頭上にいった魔道具が一斉に落とされる。
「奇襲!」
「敵はどこだ?」
「いません」
「なんという悪辣な。奇襲するだけして逃げたのか」
俺は審判役として、アウトになった生徒を集合場所まで行くように案内した。
リッツの班は何人か戦線を離脱する事になった。
2回目は出来ないから、無意味に思えるが、敵の数を削れば、それだけ弱体化する。
少し離れた所におも研のメンバーが集まる。
「ふはは、あのリッツの顔と言ったら」
「笑ったら可哀想ですわ」
「頭上からの攻撃を警戒してないからよ」
「妹よ、普通しないぞ」
「考えたら森なんだから、木は利用しないと勿体ない」
「まあな」
上を見ている奴は意外と少ない。
盲点をついた攻撃と言える。
歩兵にヘリは天敵だものな。
誘導魔法も効果があるが、木を盾にすると簡単に防がれる。
ふむ、ラチェッタはよく考えている。
ただ、移動が魔法ありきなのが少しいただけない。
蔦で作った蜘蛛もどきは便利だけど、移動速度に難がある。
俺なら空を飛ばす。
レーザーを使った超遠距離狙撃と組み合わせれば無敵だろう。
陣地に戻ると陣地は陥落してなかった。
トラップの魔道具は十分に働いたようだ。
「今回は自信がある。優勝は頂きだろう」
「勝って兜の緒を締めよですわ」
「おい、囲まれているぞ」
「本当だ。凄い人数いるわ」
奇襲を食らって嫌がらせされたグループが全て結託したらしい。
それからの展開はまあ予想通りだ。
多勢に無勢でどうしようもなかった。
「みんなアウトで旗も取られた。終わりだな。集合場所に行け」
俺はそう言った。
敗因は各個撃破しなかった事だ。
中途半端に手をだして敵を多数作った。
奇襲を掛けたなら陥落させるまでやらないといけない。
うなだれたベーク達。
トップは逃したようだ。
完走の点数は大きいからな。
「調子に乗ったら痛い目にあう。良く分かったよ」
ベークが分かったような事を言う。
「誰にでも噛みつく狂犬は始末される。チンピラの掟」
「くそう、あと少しだったのに」
コネクタが悔しそうだ。
点数に関していっておくと、敵をアウトにすると1点。
旗を取ると10点。
完走は50点。
班の旗を盗られるとその班の人間は全員アウトだ。
点数は班の人数で頭割りになる。
班の人数が少なければ少ない程、旨味が大きい。
6人ぐらいがベストな人数だろう。
集合場所でマイラ達とお茶を飲みながら話す。
「ベーク達は詰めが甘いですわね」
優雅な仕草でカップを傾けてから、レクティが言った。
「敵は無力化しないと。それには圧倒的なパワーよ」
リニアなら身体能力のゴリ押しでなんとかするんだろうな。
「生き残る事が重要だと思う。その視点が抜けたのが駄目だったのね」
セレンがしみじみと語った。
「お子ちゃま思考には優勝は無理って事よ」
「マイラは生き残りの天才だからな」
「まあね。そうしないと生きていけなかったから」
ベーク達には良い薬だろう。
若いうちは失敗もしないと。
俺は前世の歳を足すと中年もいいところだ。
青臭い失敗などできない。
特に命が掛かっているような場面ではそうだ。
失敗できるのは幸福な事なんだろうな。
マイラは自分では思っていないが不幸なんだろう。
レクティもだ。
あの抜け目なさを身に着けるのはそうとう苦労したに違いない。
ベーク達の成長に乾杯!
お茶を飲み干した。
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