第287話 模擬実戦と、開始と、序盤

 季節は7月、模擬実戦の季節となった。

 ラチェッタが行くのでみんな護衛としてついて行く。


 模擬実戦の為に、王都近くの森に集合した。

 ルールを説明すると、魔法は光魔法しか使ってはいけない。

 頭と胸に光に反応する魔道具の的を付けられ、これに光を当てられるとアウトだ。

 死んだ者扱いになる。

 どれぐらいの光に反応するかと言えば、懐中電灯を至近距離で当てたぐらいの光に反応する。

 太陽光にも反応するので、この葉の影から出る時は要注意だ。


 光の魔法は、進むのが遅い。

 なぜかと言うと光そのものは早いのだが、光源を移動する魔法が遅いというべきだろう。

 風や1Gぐらいの重力でも光源は動かない。


 動かすには魔法そのものを動かす必要がある。

 この魔法を動かすのが遅いのだ。

 今回、レーザーは使わない。

 ズルすると面白くないからだ。


 俺達がやった一昨年の時も、同じ事を考えたような気がする。


 強敵はリッツ達のグループ。

 なぜかというと、リッツは覗き騒動の時に鏡の魔法を完全に物にしたようだ。

 最初は氷を作り出して反射していたが、今は石英だ。

 暑い夏にも適応している。


 おも研はコネクタとベスとベークとラチェッタのグループで参加する。

 俺達はプレイヤーとしては参加しない。

 見ているだけだ。

 審判の腕章をもらったので、婚約者達と着ける。

 審判の仕事は護衛の片手間だ。


「僕は拠点を作る方が良いと思うな」


 ベークが提案して、作戦会議が始まった。


「去年奇襲を掛けられて全滅したんじゃなかったっけ」


 不満そうなコネクタ。


「そうなのよね。かといって常に動くと、遭遇戦になって、全滅もあり得る」


 ベスはどちらの作戦もピタッとこないようだ。


「陣地の作り方が悪かったのではないですか。塹壕と落とし穴です」


 ラチェッタの案はオーソドックスだが悪くない。


「いいね。僕はラチェッタの案が良い」

「ベークはラチェッタに甘すぎだよ」

「なんと言われようが、ラチェッタの案を支持する」

「梃でも動かなそうだからそれにしましょう」


「タイト様、警報の魔道具を作りましたよね。幻に触れたら光を発する魔道具を作りたりしませんか」

「ループ構造を理解すれば、ベークにも作れるだろう」


 助言してやった。

 これぐらいなら構わないだろう。


「決まりですね。キルゾーンを作り出しましょう」


 魔法で塹壕や落とし穴が掘られる。

 落とし穴は怪我をするほど深くはないし、尖った杭も設置してない。

 あるのは幻に触ると光を発する魔道具だけだ。


 この魔道具は木の陰にも設置された。

 樹に隠れて狙撃しようとすると、トラップに掛かるというわけだ。


 引っ掛かると光源が弧を描いて襲って来るトラップとかも作った。

 ロープの先にライトの魔道具を付けただけだけどね。

 トラップのスイッチの仕組みが多少難しいだけだ。


 仕掛けが出来て、4人が塹壕にひそむ。


 木の陰が光った。

 さっそくトラップに引っ掛かった奴がいるらしい。


 一人だけなので、偵察にきただけだろう。

 俺が木の陰に行ってみると、男子生徒がふてくされていた。


「ちぇっ、アウトかよ。こんなのありか」

「ルールだからな」


 偵察に行ったマイラが戻って来た。


「リッツ達は鏡を設置して光の要塞を作っているみたい。鏡の角度を調節すると遠距離攻撃になるようね。攻略法はあるけど」

「簡単なのは鏡を黒く塗ってしまえば良い。相手の体じゃなければ、魔法攻撃し放題だ」


 石を投げて鏡を割るという手もある。

 もっともそんな事は想定済みなのだろうな。

 簡単なのは何枚も鏡を用意すれば良い。

 我慢比べになるだろう。


 落とし穴に嵌って全身に光を浴びた女生徒が呆然と立っている。


「ちょっと酷い。落とし穴ってありなの」

「ルールには抵触してないよ」

「普通、しないわよ」

「戦争だったらあり得るぞ。爆発して戦死だな」

「ちょっとやだ。想像しちゃったじゃない」


 アウトの生徒には集合場所を教えてそこに行ってもらう。

 守る方が強いというのが定石だ。

 ただし反撃を食らわないところから、一方的に遠距離攻撃されたら、どうにもならないが。

 光は土壁でも防げる。

 結局はやりようだな。


 その場に合った攻撃方法をいかに取れるかが重要だ。

 守りは万全なので、ポイントを稼ぐためには、そろそろ攻撃部隊を出して、敵の本拠地を叩かないとな。

 人数が4人なので難しいところだ。

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