第266話 生徒会選挙と、諍いと、目的
生徒会選挙の季節がやってきた。
「タイトぅ、僕を応援してくれ」
「いや俺だぁ」
ベークとリッツが気持ち悪い目で俺を見ている。
「なに、二人とも立候補するの? やめとけ、カソードには勝てない。現職は強いんだ」
「面白ければそれで良い。おも研の掟」
マイラが完全に面白がっている。
「二人ともどうして出るつもりになったんだ」
「僕は将来魔導師を束ねる男だ。生徒会ぐらい牛耳られなくてどうする」
ああ、ラチェッタに何か言われたんだな。
「俺は言えない。約束したんだ」
リッツはまたしてもそれか。
「トレンに何か言われたのか?」
「ぎくっ」
やっぱりな。
そんな事だと思ったよ。
こいつらの脳内は女の事しかないのか。
「おも研のメンバーに手伝わせるのは許可しよう。ただし自発的にだぞ。無理強いはするなよ」
「タイトぅ、手伝ってくれるのだろう」
「俺は今回は誰も手伝わん」
「そんなぁ」
なんと言われようが、手伝わない。
マイラとレクティはベークを手伝うらしい。
セレンとリニアは手伝わない。
ベスとコネクタはリッツを手伝う事にしたようだ。
理由はなんとなく分かるな。
マイラは完全に遊んでる。
レクティはラチェッタに恩を売りたいのだろう。
おも研のメンバーではないが、ソレノはリッツを手伝う事になっているらしい。
リッツの方の情報を集めるためだ。
情報を集める本命はトレンだけどな。
セレンはベークとは距離を置きたいから分かる。
リニアは興味がないのだろう。
ベスとコネクタはベークとリッツどちらでも良かったのだろうが、釣り合いを取ったと思われる。
ベークの強みは、新魔法の魔道具で潤っているから、その経済力だ。
リッツの方はなんちゃらミカカ語クラブの人員だ。
30人近くいるらしい。
ミカカ語の部活のメンバーはトレンを除けばみんな男だ。
なんというか姫だな。
『ソリイチミ・ヒラカイ』というミカカ語を合言葉にしている。
なんちゃらミカカ語が流行り始めている。
異国風の発音に惹かれたのだろうか。
ミカカ語クラブのメンバーは着実に増えている。
一方ベークはとにかくチラシを配っている。
そしてポスターを至る所に貼った。
間違ってはいないけど、面白みがないな。
いかんね、口は出さない事にしているのに。
そして、ミカカ語の部活のメンバーとマイラが喧嘩になった。
俺はラチェッタから聞いて現場に駆け付けた。
「誰がビッチなのよ」
「コニカソクと言っただけだ」
「どうせ誰にでも股を開くって意味でしょ」
「ちっちっち」
「リッツ教授、イミキリニトク・ミカカ語の解説をしてやって下さい」
「コニカソクは嫌な女という意味で、性的な意味はない」
「そんなの知るか。嫌な女って言ったって事は、喧嘩売っているのね」
「マイラ、敵の手に乗ると思うつぼだ」
「分かっている。良く吠えてすぐ噛みつく犬は弱い、スラムの法則。大物は時期を見て喉笛に一撃」
「リッツ達も退けよ。ただしコニカソクと言った奴はマイラに謝れ。どんな言葉だろうが侮辱した事に変わりないからな」
「謝ってやれ」
リッツが偉そうだ。
勘違いしなければ良いがな。
「すいません」
とにかく場は治まった。
トレンは何をしているのかな。
「リッツ、トレンは何をしている」
「トレンは筋トレしてる。たまに卵の白身と鶏肉とブロッコリーを食う以外は」
「それだけか?」
「虫も食べてるけど、あれは辞めてほしい」
なんかトンチンカンな答えが返ってきた。
「筋トレしているトレンさんは美しいよな」
「うんうん。あの筋肉の盛り上がりがたまらん」
ミカカ語の部活の奴は変な性癖だな。
洗脳していたりはしないらしい。
平和な事で良かったが、トレンはどういうつもりなんだろう。
意図が見えない。
選挙に関心はないのかな。
でもそれならリッツを焚きつけなくてもいいのに。
今はおいておこう。
レクティがそのうち情報をあげて来るはずだ。
カソードはというと本命候補らしく横綱相撲だ。
魔法陣ラジオを使った宣伝を展開している。
ベークも魔法陣ラジオを使いたいだろうが、そこまでの金はないようだ。
そして、投票が始まった。
結果はカソードの勝ちだった。
順当だな。
「上手くない展開ですわね」
レクティがそう言葉を漏らした。
「何か分かったのか」
「トレンの今回の目的はイミキリニトク・ミカカ語クラブの勢力を増す為だったようです」
生徒会長の座は取れなくても良かったという事か。
だが、今の所は静観だな。
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