第264話 新人勧誘と、おもしろ研究と、謎の女

 おも研の新人勧誘だ。

 ラチェッタは来たけれど、他は誰も来ない。


 そう言えば、魔法で面白い事をするのが目的だったな。


 みんなに聞いてみるか。


「なあ、魔法で面白い事をするのが、魔法おもしろ研究会の目的だよな。みんなは研究テーマが何かある? 俺はそうだな、魔導書を作りたい。そして祠に安置するんだ」

「タイトらしいね。私は水魔法を使った幻術がやりたい。囮やフェイントは重要」


 マイラは水魔法でデコイを作るのが目標らしい。


「そうですわね。思考加速をやってみたいですわ」


 俺が諦めた研究テーマだ。

 脳の働きを加速する方法がどうしても浮かばなかった。

 レクティはその難題に挑戦するらしい。


「私は遥か彼方から見下ろしたいですね。メテオ魔法に視線を加えたい」


 セレンは視覚共有か。


「魔法は苦手よ。サイリスが元通り復活したし。魔法でやる事はないわ。でもサイリスと話を出来たら素敵だと思う」


 リニアは動物と話せる魔法か。

 前世の玩具でそういうのがあったな。

 サイリスに伝言魔法が使えれば良いんだが。

 ドラゴンのアルゴはできたけど、サイリスには難しいだろうな。


「僕は、新魔法を極めたい」

「ベーク、それだと楽しくないな」

「では新魔法で玩具を作る」


 ベークは新魔法で玩具か。


「俺はラブラブ度を測定したい」


 リッツよ、それが完成したら、地獄を見るぞ。

 ソレノは別れたがっているんだからな。

 まあ良いか。


「俺は光の芸術を目指す」

「姉さんの劣化版ですね」

「いや花火にはない魅力があるから案外馬鹿にできないぞ」

「タイトさんは見て来たような事を言うのですね」


 前世でライトアップとかレーザー光線のショーとか色々と見たさ。

 ドローンにライトをつけて空に文字を書くとかもあったな。

 工夫次第では面白い。


「私は宝石を作りたいですね」


 ベスは人工宝石か。

 出来ない事はないんだろうけど、プログラム的魔法でないと難しいかも。

 まあ良いだろう。

 研究テーマだからな。


「わたくしは、輪を作りたいですね。人と人とのつながりの輪。そういう魔法を作りたいですわ」


 ラチェッタはSNSだな。

 原始的なものなら可能だろう。


「よし、みんな研究テーマが決まったところでほどほどに頑張ってくれ。別に期限とか採点があるわけじゃない。楽しけりゃ良いんだ。凄い物が出来たら論文にして提出するといいかもな」


 それにしても新入生は来ないな。

 エミッタがさんざんやらかしたからな。

 悪評が立ってなければ良いが。


「さあ、チラシを配ろう」


 新入生におも研のチラシを配る。

 リッツが奇妙な風体の女子と話し込んでいる。

 どこが奇妙化と言えば頭の右半分が剃ってあるのだ。

 左半分はロングにしている。

 美人だから、様になっているけど、普通の人がやったら痛いやつだな。


「キララシコンイ」


 女子の別れの挨拶が聞こえた。

 どこの言葉だ。


「コンイ」


 リッツが挨拶を返す。

 女子は去って行った。

 未知の言語を会得したのか、リッツらしくない有能さだな。


「リッツ、さっきの言葉はなんだ?」

「あれはイミキリニトク・ミカカ語らしいですよ」

「覚えたのか?」

「出会った時と別れの挨拶だけだけど。会った時はクニやクイリリラ。別れる時はキララシコンイ。コンイだけでも良いらしいけどね」

「へぇ、彼女はここら辺の言葉も喋れるの?」

「うん、喋れるみたい。話は通じてたよ」


 遠く離れた場所から来た人間なのかな。

 世界は広いから知らない言語があっても不思議はない。


 ツンツンとレクティに背中を突かれた。

 何だろ。


「さっきの女、只者ではありませんわ。相当な手練れです」

「武術の凄いのは分からないな。不思議な感じの女の子だったのは間違いない」


「念のため、部下に後を付けさせました」


 ふーん、マイラはどう思ったのかな。


「朧にも後を付けさせたよ。胡散臭いというか血の匂いがした」


 朧はマイラが雇っている密偵だ。

 本名は知らない。


「わたしと良い勝負するかもね。やったら勝つけど」


 リニアも何か感じ取ったらしい。


「私だけ何も感じなかったの。ショック」


 セレンがしょげた。


「俺も感じなかったよ」

「ソレノの任務は当分解けないかも知れません。リッツとの関係が疑われます」


 リッツもベークに劣らずトラブルメイカーだな。

 でも微妙なんだよな。

 リッツを篭絡しても良い事はない。

 貴族でもないし、おも研のメンバーを除けば有力人物とも繋がっていない。

 だが、注意しておこう。

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