第227話 植木鉢と、幼少期と、ソナー

 寮のリビングに見慣れない植木鉢がある。

 誰が置いたのか。


「誰か置いた?」


 俺が指を指すと、全員が首を振った。


「それ、盗聴器」


 マイラが言う。

 マイラの感は鋭いな。

 幼少期はどんな生活をしてたんだか。

 とりあえず盗聴器を停止させる。

 犯人捜しは置いといて。


「マイラ、一番小さい頃の記憶はなんだ」

「ええと、河の水の流れる音。舟の上で生活してたみたい。今でも水の流れる音には癒される」


 河か、水の流れを眺めながら育ったんだな。

 流れを把握しているのか。

 魔力の流れ、空気の流れ、血液の流れ。

 魔法陣の新しい形をどんどん生み出すのもそれを把握しているからだろう。

 マイラのスキルは流体把握だな。


 なるほどね。

 じゃあリニアは?


「リニアの最初の記憶は?」

「孤児院で孤児の子供達と一緒にいた事かな」


 となるとリニアのスキルは共生かな。

 それに近い物だろう。


 レクティは聞くまでもないな。

 オルタネイト伯の執務室で育ったんだな。

 そんな気がする。


 よし、スキルははっきりした。

 犯人捜しをしよう。

 植木鉢を調べる事にした。

 むっ、底が何かおかしい。

 魔道具を起動すると、足が生え動いた。

 くっ、ゴーレム技術を使ったのか。


 ドアから入ったのではないな。

 窓も違うとなれば、暖炉の煙突だな。

 そこしかない。

 植木鉢の縁にすすがわずかに付いている。

 これで間違いないだろう。

 犯人はまだこの近くにいるかな。


extern MAGIC *magic_ping_make(float mana);

extern int magic_sonar(MAGIC *mp);

extern int mclose(MAGIC *mp);


int main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法の定義*/

 int distance; /*距離*/


 mp=magic_ping_make(50.0); /*60メートルに広がる魔力の波*/

 distance=magic_sonar(mp); /*反響した魔力の距離を測る*/

 mclose(mp); /*魔法終わり*/

 return(distance); /*距離を返す*/

}


 この魔法を使ってみた。

 俺のスキルで何か出来ないか作っておいたのだ。

 波と言えば音。

 音と言えばソナー。


 魔力も貫通するイメージで無ければ反発する。

 要するに反射して帰って来るわけだ。


「あっち」


 マイラが指を指す。

 おお、反射した魔力の流れを把握しているのな。

 リニアが外に飛び出して行った。


 ほどなくしてリニアが戻ってきた。


「自害しやがって、胸糞悪い」


 リニアが荒れている。

 もう一発ソナー。


「あっちとあっち」


 まだ、いるのか。

 リニアが動かないので、マイラが外に行った。

 ほどなくして、マイラが人間を二人引きずってきた。


「生け捕りしたのか。凄いな」

「見えない所から一撃を繰り出せば、自害する暇などない」


 さいですか。

 レクティが歯に仕組まれている毒物を回収する。

 髪の毛の中にも隠していたようだ。


 諜報機関を率いているだけあってレクティは抜け目ない。

 捕まえた男達はダイナの同僚がどこかに連れていった。


「煙突はどうしよう」

「金網で物が入れないようにすればよろしいでしょう。一応警報器を煙突にも仕掛けておいて下さいませ」

「まあそれで良いか。暖炉の前に鉄柵も置こう」


 それにしても、屋根に警報器を仕掛けておいたのに、なぜ引っ掛からなかったんだ。

 特殊な魔法かな。

 ちょっと聞いてみたい気もする。


「駄犬はやっぱり駄目ね。使えない」

「くそっ、今回は後れをとったけど、次は上手くやるわ」


 リニアのスキルが共生だとすれば、尋問の方が得意かも。


「リニア、たぶんだけど、洗脳系の魔法が使えるかも。敵に同僚だと思わせて安心させる魔法かな」

「好みじゃないわ」

「じゃあ眠り。安心させて眠らせる」

「それもちょっとね。麻痺とかできないの。それなら許せる」


「リニア、もしかして体を変形させたり出来ないかな。それと融合してるモンスターの能力を使うとか」

「やった事ないわね。【麻痺毒】」


 うわっ、液体がリニアの手から出たよ。

 レクティが出た液を回収する。

 試験するつもりだな。


 リニアは体の能力を使い切ってなかったんだな。

 どんな能力があるかは未知数だ。

 怪力だけだと思ってたが、小技も使える奴だったんだな。

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