第218話 ゴブリンと、ロボット3原則、反抗

 ちょっと思いついた。

 ゴブリンにロボット3原則を入れてみたらどうなるかと。


 ゴブリンは声帯の形状で人間の言葉は喋れない。

 だが、人間の言葉は理解している。

 意外に賢いのだ。


 色々な作業をさせられるのなら、ゴブリン農場も更なる発展をみせるだろう。


「ゴブリンを人足にするのは別に構いやしませんが、あいつらが素直に言う事を聞くか疑問ですぜ。力で従わせてはいますが、チンピラと同じでさぁ。常に下克上を狙ってギラギラしている。まあ、モンスターにしては大人しい方だとは思いますがね」

「毛を刈り取った奴を5匹ぐらい借りていくよ」

「無理だと思いますがね」


 とりあえず、5匹にロボット3原則を適用する事にした。


#include <stdio.h>

#include <stdlib.h>


void main(void)

{

 FILE *fp; /*魂の定義*/

 fp=fopen("神秘魔法名.soul", "rw"); /*魂を開く*/

 soul_command(fp,"人間への安全性、人間の命令への服従、自己防衛、適用期間1週間"); /*命令する*/

 fclose(fp); /*閉じる*/

}


 この魔法だ。

 奴隷化みたいだが、適用期間を1週間にしたから良いと思う。

 とりあえず、土木工事をさせてみる事にした。


 街道の保全作業だ。


「よし、そこの穴を埋めろ」

「ぐぎゃ」


 うんうん、上手くいっている。

 事件は昼飯を食べさせてから起こった。


「午後の作業を始めるぞ」


 ゴブリンが従わないのだ。


「なんでだ。人間には逆らえないはずなのに」


 逃げようとしたので、捕まえてゴブリン農場に戻した。


「駄目だったよ」

「そうでしょうね」


「魔法で命令したんだ。人間への安全性、人間の命令への服従、自己防衛って」

「なるほど。おかしいですね」


「魔法は拒否されなかったし上手くいくと思ったんだけどな」

「チンピラは裏切る危険性が常にある。スラムの鉄則」


 農場で遊んでいたマイラ達も寄って来て、意見を言い始めた。


「お給料をお支払いにならないからでは、ないですか」


 とレクティ。


「餌は与えたけどね」


「理解する頭がなかったのでは」

「強さは身に染みていると思うけど」


 セレンとリニアが言う。

 うーん何だろ。

 どこで失敗したんだ。


「従えるのにはボスと思わせる事が必要」

「分かりますわ。諜報組織も序列をはっきりさせておかないと」

「そういうのは嫌かな。納得して働いて欲しいと思う」

「やっぱり腕力でしょ」


 4人の意見を聞いたが、俺の力が足りなかったみたいな感じだ。


「そういう、問題かな。人間の命令への絶対服従のはずなんだけど」


 と俺。


「ゴブリンは馬鹿だから、命令を理解できなかったんじゃ。頭が悪い奴はどこにでもいる」

「そうですね。いろんな方がおられます。使えない人は配置転換しますけど」

「今日遊んで分かったけど、ゴブリンは賢いと思うよ」

「あいつらが、ずる賢いのは認める」


 ゴブリンが命令を理解する頭がなかったというのは考えられない。


「命令を良いように考える奴っているよね」

「ええ、そういう方は大抵やらかします」

「人間もだけど自分の都合の良い様に考えるのはあるね」

「うんうん」


「チンピラは自分たちの方が上だと勘違いしている奴が多い」

「そうですね。出来ない人ほど自分を上に考えている人が多いです」

「そうはなりたくないね」

「まあありがちよね」


 上だと思われたのか。

 上?

 もしかして、あれか。


 ゴブリンは自分たちの方が上位種だと思ったのか。

 それで、俺を下位種族、自分たちより下にみた。

 要するにゴブリン達が人間で、俺はゴブリンだと思われたのか。

 くそっ、ゴブリンの奴。


 会話が通じないから確かめるすべはない。

 ないけど、これが正解な気がした。


 完全な奴隷化は可能だ。

 マスターとして俺を覚え込ませれば良い。

 だが、やりたくない。

 ロボット3原則だってグレーゾーンなのに。


「今回は失敗だ。みんなありがと」

「ゴブリンを調教したい時は言って、借りてきた猫みたいにさせてあげる。スラム流調教術を見せてあげたい」

「マイラさんがやったら半死半生になりますでしょう。モンスターですから薬で気持ちよくさせて」


 二人が物騒な事を言い始めた。

 ちょっと誰か止めて。


「可哀想よ」

「セレン、もしもの時の事よ。タイトなら意地でも魔法でなんとかするでしょ」


「そうだね。今回は失敗だったけど、魔法でなんとかする事を考えてみるよ。諦めなければ終わらないから」

「そういう前向きな所が好きだ」

「うんうん」

「ですわね」

「まあね」


 また何か考えるさ。

 でないと退屈だからな。

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