第188話 個人面談と、添い寝と、枕叩き合戦
王都は落ち着きを取り戻していた。
モンスターに噛まれても医者が治してくれる。
風邪など他のウィルスの病気も治るだけあって評判は上々だ。
偽医者の取り締まりは常に行われている。
医師ギルドは死活問題なので、偽医者を見かけると
夏休みももう終わりだ。
バラクタ邸での最後の晩餐を頂く。
「ひと夏のアバンチュールはどこ?」
マイラが突然そんな事を言い始めた。
他の3人はうんうんと頷いた。
それで理解しちゃうのかよ。
分かってないのは俺だけ。
ええと、色恋の部分が少ないと文句を言っているのかな。
ムードが足りなかったのかもな。
でも俺は8歳だぞ、体の設定は13歳だが。
「ひとりずつ話そう。マイラ、レクティ、セレン、リニアの順番だ」
一度話をしておかねばと思ったのだ。
マイラが俺の部屋に入ってくる。
「マイラの気持ちは分かる。12歳といえば性的な事に目覚める時期だよな」
「今日、結ばれるの?」
「いいやマイラが17歳になるまで待ってくれ」
「そんな」
「マイラ、愛しているよ」
「ふぅ」
マイラがゆでだこみたいに真っ赤になった。
キスをしてやった。
キスぐらいなら良いだろう。
マイラが出ていってレクティが入ってくる。
「レクティには助かっている。感謝している。レクティの気持ちを知っていて、利用しているみたいになって悪いな」
「分かっているなら。受け入れて下さっても」
「俺としては一夫多妻は馴染めないんだ」
「それは度量がありませんね。4人分の愛情をもって4人を愛する事は出来ないのですか」
「難しいな」
「分かりました。待ちます」
「待っても気持ちは変わらないと思うが」
「わたくしには分かります。結論はそうなると思いますよ」
意味深な台詞を言ってレクティが出ていく。
セレンが入ってきた。
「セレンの努力家な所は気に入っている。だが、婚約者にはできないんだ」
「そうですか。でもこの想いは絶ち切れない。想う事は罪ですか」
「いいや。好きだと思う気持ちは否定しないさ。時間が解決すると思う」
「そうですね。私もそう思います」
セレンが出ていって、リニアが入ってくる。
「一度聞きたかった。俺のどこが好きなんだ」
「決まってるじゃない。私を守ってくれるところよ。そんな事を言ってくれる男性はいないわ」
「じゃあ、仲間で良いじゃないか」
「いやよ。家族になりたい」
「分かったよ。ランシェに姉弟に出来ないか聞いてみる。ランシェは一芸に秀でた人が好きそうだから、リニアを気にいると思うな」
「そういう事じゃないんだけど、姉弟になって恋愛するのも良いかも。背徳感があるわ」
4人と話したが誰も諦めない。
仕方ない。
「今日はキングサイズのベッドでみんな一緒に寝よう」
俺は皆が集まっている居間でそう提案した。
「ハーレムね。正妻は私。譲れない」
「エッチな事は無しだ。破ったら孤児院の刑だ」
「あれを出されたら大人しくするしかなさそうですわ」
レクティの言葉にみながうんうんと頷く。
キングサイズのベッドに5人で寝る。
場所で揉めたが、くじで決定した。
俺の両隣は、セレンとレクティだった。
マイラは何やら企んでいそうだ。
そんな目の光がある。
夜中になったら隣に割り込むつもりなのだろう。
「消すよ」
俺は魔道具の灯りを消した。
セレンとレクティが抱きついてくる。
暑いんだが。
抱きつくぐらいは許してやるか。
マイラの歯ぎしりが聞こえる。
夜目が利くんだな。
月灯りがあるからな。
沢山の人と寝ると楽しいなと考えながら、俺はいつしか眠りに入っていた。
「痛っあ」
夜中に誰か声を上げて起こされた。
声はセレンだった。
セレンがベッドから落とされているのが、月灯りに照らされて、ぼんやりと見えた。
落としたのはマイラだな。
ニコニコしながら俺に抱きついている。
セレンは枕を掴むと、それでマイラを殴打した。
たちまち、5人入り乱れて枕叩き合戦が始まった。
「あはははっ」
「このこの」
「よくも」
「くのくの、こうしてやる」
みんな笑顔だ。
月灯りだと少しホラーな感じもするが。
笑いあって枕叩き合戦は終わった。
なんか仲の良い家族みたいだ。
あれっ、俺は何を。
そんな馬鹿な。
もう寝よう。
寝て忘れるに限る。
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