第185話 セレンと、完全回復と、覚悟
夏休み、真っただ中だ。
デートに行ったり海にも行った。
なぜか戦闘機会が多いが、それは仕方ない。
襲ってくるのは俺のせいじゃない。
「私、医者の試験を受ける」
みんなで課題をやっていた時に、セレンが突然言い出した。
「大変な職業だぞ。尊敬されるだろうけど、激務で
「ん? そんな事はないよ」
マイラから突っ込みが入った。
「そうですね。医者は怠け者が多いです。権威を振りかざして、尊敬どころか軽蔑されてます」
レクティがそう補足した。
しまった、前世の常識で話していた。
この世界の医者はだめだめなんだな。
「人が死んでも、虫けらが死んだぐらいにしか思わないのが、医者かなぁ。金がないと平気で見捨てるよ」
リニアも付け加えた。
「俺が言ったのは一握りの立派な医者だ。セレンが目指すのは立派な医者だろう」
なんとか誤魔化した。
「ええ、立派な医者を目指すわ」
セレンが持っている医者になる為の参考書を見る。
あれっ、臓器の数が少ないんじゃないか。
どれって指摘は出来ないけど、もっと多かった気がする。
異世界だからなのか?
そんな事はないはずだ。
解剖学が発達してないのかな。
まあいいや。
指摘しないでおこう。
ランシェにはこそっと、解剖学を発展させるように言っておこう。
いや待てよ。
「医者は死体を切り刻んだりしないのか?」
「しないですね。問診して薬を出すだけです。重傷者は魔導師が回復魔法で治します」
魔法の存在が医学の発展を阻害しているのか。
呪文でぱぱっと治れば、そりゃ発展しないよな。
完全回復の魔道具は作れる。
簡単な魔法のだとこんな感じだ。
あらかじめバックアップを取っておく必要はあるが、神秘魔法名を指定して発動させれば治る。
#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
#include <string.h>
void main(int argc,char *argv[])
{
char scom[4+1+200+5+1+200+5+1]; /*コマンド命令を入れる*/
strcpy(scom,"copy "); /*文字列に『copy 』を入れる*/
strcat(scom,argv[1]); /*文字列に神秘魔法名を連結*/
strcat(scom,".bbak "); /*文字列に『.bbak 』を連結*/
strcat(scom,argv[1]); /*文字列に神秘魔法名を連結*/
strcat(scom,".body"); /*文字列に『.body』を連結*/
system(scom); /*体のバックアップを体の情報に上書きする*/
}
バックアップもこれを改造すればできる。
出来るが、神秘魔法名の技術は魔導師が独占してるのだよな。
セレンに教えていいものか。
刺客がわんさか来る可能性もある。
いっそのこと神秘魔法名の存在を公表しちまえば良いんだけど。
魔導師の反発は必至だな。
戦乱になる可能性もある。
「セレンは殺される危険があっても医者を目指したいか?」
「ええと。正直に言うわ。自分の命も救えない人は資格がないと思う。でも、自分の命を投げ出しても救いたいって思わないと失格なのかも。矛盾しているね。覚悟というか信念が足らないのがよくわかったわ」
「そんな深い意味で言ったんじゃないけどな」
「でも揺るがない信念は必要でしょう」
「そうかもな。それが分かっているセレンは立派だ」
「医者は諦めるわ。良く考えたら攻撃魔法は殺す為にあるのよね。命を救う人間が殺しをしたらいけない。攻撃魔法を極めたいのに医者はないわよね」
軍医とかは、医者だけど軍人だな。
混乱させてもなんだから言わないけど。
セレンはまだ考えが固まってない。
マイラとレクティとリニアは目指す方向が決まっている。
セレンは迷いがあるんだな。
それが弱さのような気がする。
だけどまだ若い。
十代前半で悟っている人間なんか普通いないさ。
マイラとレクティとリニアが特殊なだけだ。
「セレン、自分がどうなりたいかは、ゆっくりと考えたら良い。焦る必要はない」
「でも3人と比べて私は……」
「好きな様に生きて、好きな様に死んでいく。スラムの生き方」
「好きに生きたら良いのね。信念なんかなくても。やっぱり医者の試験は受けるわ。何事も挑戦よ。資格を取ってから考える事にする」
マイラの言葉でセレンの元気が出たようだ。
挑戦するのは良い事だ。
自分を型に嵌めるのはいつでもできる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます