第146話 アリの巣と、クィーンと、リベンジの誓い

Side:リラ

 はっ、所詮はアリよね。

 笑っちゃうぐらい弱い。

 こんなの100万匹出て来ようが、物の数じゃないわ。


 ほらっ。

 私は手刀でアリの巣ダンジョンにいる2メートルほどのアリモンスターの首を落とした。

 アリのモンスターは頭と胴体が離れていてもまだ生きている。

 頭は盛んに顎を開け閉めして、攻撃しようとしていた。

 頭だけじゃ動けないんだから、いい加減死んでよね。


「回収、お願い」

「ご苦労、いい研究材料だ【収納魔法】」


「私、先に行っている」


 団体でお出迎えね。

 関係ないけど。

 首を一撃で落として回る。


 歯ごたえが無さ過ぎてちょっとね。

 弱い物虐めは好きじゃない。


 3メートルはあろうかというアリモンスターが出て来た。

 ファイターね。

 歯ごたえがあるのかしら。

 首に一撃。

 ころんと頭が転がった。

 なんだ、一撃じゃない。


 Aランク危険地帯も大した事ないのね。

 魔の森も同じかしら。

 タイトはあそこを縦断して、エシェントドラゴンを屈服させたようだけど。


「先に進みましょう。ねっ、サイリス」


 その後は単調だった。

 100匹ぐらいの、ファイターに率いられた集団も、大した事がなかった。


 そして、通路が太くなり。

 いよいよかと思われた時に、ナイトが現れた。


 ファイターと同じぐらいの大きさだけど、移動速度が違う。

 でも、余裕だけど。


 首を落とそうとして、かわされた。

 手刀は頭で受けられた。

 硬いわね。

 手が痺れる。


 大あごが迫ってきたので、両手でつかんで引き千切ろうとするが、びくともしない。

 どんなパワーしているのよ。

 そして、至近距離で液体を食らった。

 溶ける鎧と肉体。


 サイリスが起きる。

 私の意識は暗闇になった。

 気づいた時にはボロボロの体と、もっとボロボロのナイト。

 勝ったようね。

 肉体が治っていく。


 10匹のナイトを見た時、絶望した。

 そして、ナイトどころか奥からナイトより大きいモンスターが現れた。

 勝てない。

 こう思ったのはタイトに対峙した時以来。


 クィーンなの。

 なんという威圧感。

 私の中のサイリスが怯えている。


 でも、ここで退いたら失敗作と言われて、処分されるかも。

 私は人工魔王だから。

 同格のはず。


 意を決して、クィーンを殴りに行った。

 かわされた。

 残像を殴らされた。


 くそっ、アリのくせしてなんて早いのよ。

 そして、腹部に衝撃を受けた。

 顎で突かれた。

 腹に大きな穴が開いている。


「撤退しろ。ナイトの死骸は回収した。クィーンは惜しいが、あれは手に余る」

「そうね」


 いざという時の為に渡されてたアリモンスター用の忌避剤を撒く。

 そして全力で逃げた。

 悔しい。

 のほほんとしたタイトに可能なのに私は駄目だ。

 一体何が違うのよ。

 覚悟、能力、生まれ、才能、何が違うの。


 タイトをもっと研究して、取り入れるべき所は取り入れないと。


「回収係はどうした?」

「遅いから置いて来た。運が良ければ生きて帰れると思う。魔王は凄かったわ」

「そうか。まだ足りないか」


「実験台は嫌! 手術は嫌!」

「落ち着け取り乱すな。ここでサイリスが出て来たら、我々は全滅だ」


「実験台にしないって約束して」

「するよ。する。するから手を放せ」


 私は監視役の襟を半ば千切っていたのに気づいた。

 慌てて手を放す。


「食料を出して。だいぶダメージを負ったから、血肉が足りないわ」

「【収納魔法】。ほらよ」


 出された料理を次から次へと食い漁る。

 一時間ほど食べ続けて、ようやく落ち着いた。

 回収係も現れた。


「今後は魔道具を装備するか? 噂でタイトは、沢山の魔道具を身に着けているらしい」

「そういうのなら、歓迎。スピードが速くなるのをお願い。クィーンは私より早かった。それと液体を掛けられた時の防御をお願い。ナイトの酸には苦戦したわ」


「分かった。開発してみよう」


 アリの涙を見るどころか、こっちが悔し涙を見せてしまった。

 何回でも挑戦できるみたいだから、いつかリベンジしましょう。

 次こそは、アリの涙を見てみたい。

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