第107話 オーガと、水拘束と、ティタイム
オークの領域を抜けたらしい。
オークを見かけなくなった。
他のモンスターもいない。
「気をつけて。大物がいる気配がする」
マイラがそう警告を発した。
「同感」
ダイナも同じように感じているらしい。
鳥の声がぴたりと止んだ。
耳を澄ますと虫の声も聞こえない。
そして、重たい足音が聞こえて来た。
木々の上に頭一つ出ているオーガが現れた。
Aランクモンスターだ。
軍隊でもって倒すような相手。
マイラとダイナが構える。
レクティはサイラの手を引いて10メートルぐらいさがった。
うひょう、お宝だ。
オーガの皮は金貨何百枚にもなる。
「マイラ、ダイナ、傷をつけるな。価値が下がる。先手必勝【水拘束】」
5メートルほどの水球が現れ、それがオーガの顔に広がる口と鼻を塞いだ。
オーガはかきむしるが、水に手ごたえなどありはしない。
追加で電撃もお見舞いしておいた。
ほどなくして、オーガは地響きを立てて倒れた。
やった。
大儲けだ。
魔石まで含めれば物凄い儲けになる。
さっき使った魔法はこんなだ。
extern MAGIC *water_make(float mana);
extern void bind_move(MAGIC *mp);
extern int mclose(MAGIC *mp);
extern void time_wait(long time_ms);
void main(void)
{
MAGIC *mp; /*魔法定義*/
mp=water_make(0.5); /*水を出す*/
bind_move(mp); /*拘束動きで魔法を動かす*/
time_wait(60*10000); /*十分待つ*/
mclose(mp); /*魔法終わり処理*/
}
もう一頭ぐらいオーガがいないかな。
いつの間にか虫の声と鳥の声が戻っている。
こりゃ見込み薄かな。
集団でくればボーナスタイムなんだけど。
マイラとダイナも武器を収めて構えを解いている。
「怖かった」
サイラが傍に寄って来てそう感想を言った。
サイラの顔はまだ青い。
レクティとサイラはまだ手を握っている。
「あんなの大した事はない。機動戦士より小さいんだから」
「どんな戦士よそれ」
サイラが突っ込んで笑みが戻った。
レクティも笑った。
「なになに?」
「マイラ、物語の話なんだけど、オーガより大きい甲冑みたいな物で戦うんだ。空だって飛ぶんだぞ」
「それって甲冑の意味がないんじゃ」
「そうだな、人型である利点はない。でもロマンなんだよ。顔の造形が人間に近いのもロマンだ」
「分かんないけど、後でその話を聞かせて」
「いいぞ。たっぷり聞かせてやる。その物語は長いんだ」
レクティが浮遊する板に乗って、空高く昇っていく。
この領域も制覇だな。
オーガを魔法で収納して、テーブルを出した。
ここで一休みする事にしたからだ。
マイラとダイナがお茶の準備をする。
水の拘束魔法は使えるな。
電撃との相性が良いのも利点だ。
お茶の準備が整った。
レクティも空から降りてくる。
お茶請けはクッキーだ。
一応、毒探知を使う。
レクティが媚薬を買っていたから、気になっている。
俺に使ったりはしないと思うんだが、毒探知は貴族の嗜み。
「サイラ、ここまでの感想は?」
「凄い。それしか言えない」
「こんなの序の口だよ。噂では魔の森にはSランクを越える魔王がいるらしい」
「見てみたいような。怖いような」
「たぶん、そんなのが来ても余裕だろうな」
「私と致しましては、タイト様には魔王になって頂きたいですわ」
そうレクティが言う。
「モンスターの魔王を一対一で倒せばいいんだよな。ちょろいな」
「私も魔王と戦ってみたい」
「マイラなら、きっと倒せるさ。魔道具のバックアップをすればな」
「うん」
「猫の魔王がいたらペットにしたい」
「屈服させるのが大変そうだ。でもそういうのがいたら、ペットにしてやろう」
さて、一服したし、そろそろ探索を再開するか。
次はどんなモンスターが出てくるかな。
歯ごたえのある奴はいらない。
金になる奴が良い。
そんなに金を集めて何をするのか聞かれそうだが、野望があるんだ。
魔導師という職を根絶したい。
やつらはこの国に巣食った癌だと思う。
魔導師の知識を広めたい。
それには奴らを根絶しないと。
根絶といっても皆殺しにはしない。
魔導師を名乗るのを辞めて、魔導師の魔法の秘密を知った人間を見逃すだけで良い。
そうすれば許す。
ただ、罪を犯している場合は償ってもらうが。
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