第105話 作戦会議と、トンネル工事と、頼りになるニオブ

「作戦会議をするぞ。まずは情報のすり合わせだ」

「私は、サイラのお父さんと商談して、この地の情報を聞き出しました。この領は反乱を起こすようですね。人は兵士として集められ。税率は上がり。魔道具の工房では武器が作られ、出来たそばから買い上げられてます」

「反乱に関しては俺も同じ結論だ。それと、税率アップの証拠を探さないと」


「書類のありそうな役所の場所は猫と一緒に突きとめました」

「ダイナはわりと有能だな」


「猫を可愛がっていると、何時間その場所にいても不審がられません」

「そうか。それはダイナだからだろうな」

「すべては猫愛です。猫力さえあれば容易い事です」


「それで反乱がどう転ぶかは分からないが、出来るなら阻止したい。阻止できなくても決着はつけたい。その為にも魔の森からの侵入経路を作る」


「それで、私達は、魔の森に狩りに行くのよね。サイラに分かっている地形とモンスターの話は聞いたよ」

「マイラ、ありがとう。とりあえずの順番は、魔の森の地図を作る。それから役所に忍び込んで証拠を盗む」

「それがいいでしょうね。役所に忍び込んだのはすぐにばれるでしょうから、蜂の巣をつついたようになるに違いありません」


 そう、レクティが言った。


「そうだな。証拠を盗んだら撤退だ。じゃ明日から魔の森を制覇だ」

「腕が鳴るね」

「私、モンスターの狩りは初めてですわ」

「絶対に猫型のモンスターは殺さない」


「各自、武器の手入れを怠らないように」


 とりあえずの方針と誰がどんな情報を得たかは分かった。

 今のところ追加で情報を仕入れる必要なないみたいだ。


 みんな、有能だな。

 俺がいなくても全て解決してしまいそうだ。


Side:タンタル


 懐かしの我が家、バリアブル城。

 難攻不落と呼ばれているこの城が何とも頼もしい。

 ニオブは行方不明になってから、一皮むけた。

 実に頼もしい。


 この二つがある限り負けないと信じている。

 失った王都の邸宅はもう思うまい。


 ノンポーラは王都の邸宅が好きだった。

 その思い出が詰まった邸宅は今は見たくない。

 タイトにくれてやっても痛くない。

 金は惜しかったが、今バリアブル領の財政は好景気に沸いている。

 武器と兵士を増やすだけでこんなに活性化するとは。


 確かにその他の事はおざなりになっておる。

 だがそれが何だ。

 反乱さえ成功すれば、入って来る金はこんなもんじゃない。


「報告します。トンネル工事が9割終わりました」

「でかした。けっして王族に悟られるなよ。このトンネルの出来が奇襲を左右する鍵を握っている」

「心得ました」


 わしは、報告を聞いてから、ニオブの部屋に向かった。

 ニオブは魔道具を作っている最中だった。


「すまんな邪魔して」

「いいんですよ。今、区切りがついたところです」

「お茶を淹れさせよう。おい、お茶を持ってこい」


 壁際で待機していたメイドが急ぎ足で部屋から出て行った。


「トンネルの工事はどうですか?」

「完成が近い」

「それは良かったです。封鎖はどうです?」

「軒並み捕えておる。一人も領内には出入りしてないはずだ。言われた通り、捕まえた者は牢屋にぶち込んでいる」


「トンネルが完成したら、封鎖の方は緩めても構いません。訓練を重視しましょう。それと捕まえた密偵には偽情報を握らせましょう。わざと逃がすのです」

「なるほど、この時の為になるべく生かして捕らえたのだな」

「ええ、殺したら利用出来ませんから」


「この間作った爆発の魔道具は、優れものだな。トンネル工事にも役にたっておるし、戦闘にも役立ちそうだな」

「はい、今作っているのはそれを発展させた物です」


「行方不明になる前から魔石を欲しがっていたが、こんな事を考えておったとは」

「長年考えていたのがやっと形になりました」


「そうか。やはりタイトは要らなかったな。なんであんな奴を欲しがったのか、今になって思えば分からない」

「王族の権威は絶大です。王族になったタイトに、帰って来いというのは当たり前の話。しかし、それも今は関係ありません。反乱が成功すれば、私達が王族です」

「その通りだ。ニオブ、期待しておるぞ。そなただけが頼りだ」

「はい、頑張ります」


 ニオブさえおれば何とかなる。

 そうに違いない。

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