第95話 賭場計画と、マイラを紹介と、賭場の様子

 元締めが話があるというので会いに行く。

 クラッドの会頭の執務室は、金ぴかの置物やらがいつの間にか増えている。

 まるで成金の部屋だ。


「エアホッケーは実にいいな。今までにない画期的な魔道具だ」

「増産して欲しいって事?」

「それもあるが、マッサージ店あるだろ。あれを賭場にしてみねえか。エアホッケーで賭けさせるのよ」


「元締め、足を洗ったんじゃないの。私との約束はどうなるの。返答しだいではただじゃおかない」


 マイラがそう言って短剣を抜く。


「よせ。話をよく聞いてからにしろ。違法な賭場をやりたい訳じゃない。国公認の賭場を開きたい」

「腐敗が起こりそうな事業だね。役人とかが賄賂で捕まりそうだ」

「分かっている。だがな。娯楽も必要なんだよ。厳しいばかりじゃ民はついてこない」

「そうなんだけど。マイラはどう思う?」


「結局、禁止したってやる人はやるのよ。公認の賭場ならイカサマも少ないだろうし、身ぐるみはがされる人も減るでしょう」

「必要悪みたいなものだと分かっているけど」


 前世でもパチンコはギャンブルではないという手前でやってたが、依存症の人も生み出してた。

 酒とタバコもそうだが、やりすぎなければ、楽しいで終わるのにな。

 難しい問題だ。

 前世では収入で掛け金の額を制限する方法が検討されてたな。

 それをやってみるか。

 納税していないような層はお断りで行くか。


 管理が難しいが、流民とかで人は余っている。

 帳簿の管理をやらせれば雇用が生まれるな。

 客が飲食なんかもするだろうし、経済効果は馬鹿にできない。


「分かったよ。ランシェに話してみる」


 ついでにマイラの功績にして点数を稼ぐか。

 マイラを婚約者としてランシェに紹介してみよう。


「マイラ、王宮まで一緒に行ってくれ。正式に母に紹介したい」

「私でいいの?」

「いいんだ。俺の隣の席はマイラと決めている」


 マイラと一緒に王宮に足を運んだ。

 マイラを入れる為の手続きをして、ランシェの執務室の扉の前に立つ。

 深呼吸。

 なんか緊張するな。


 意を決してドアをノックする。


「入るがよいぞ」


 俺達は部屋に入った。


「ランシェ様におかれましてはご機嫌麗しく」

「なんだ。気持ち悪いのである。変な物でも食ったか」


「マイラを紹介したい。ゆくゆくは一緒になろうと思っている、マイラだ」

「マイラです。よろしくお願いします」


「ほう」


 ランシェは目を細めた。

 そして沈黙が場を支配した。

 誰か何か言ってくれ。


「マイラは有能なんだ。護衛としても腕がたつけど、商売も上手い。俺が作った魔道具で公営の賭場を開かせるつもりだ」

「くくっ、そんなに一緒になりたいのであるか。愛よのう。エアホッケーなる物はわらわも知っておる。あれを使うのであろう。タイト、お主の発案であろう」


 お見通しか。


「そこはまあ、建前という奴で」

「いっちょ前に企みおって。よかろう。マイラの功績はそれだけでは足りんがな。精進しろ」


 ふう、何とかなった。

 賭場はすぐに出来上がった。


 マッサージ店が元々が賭場だったからだ。

 改装がほとんど要らなかった。

 賭場に行ってみた。

 賭場は盛況で客でごった返している。

 際どい服装の女が飲み物を運ぶ。


 特大のエアーホッケー台が設置され、二人のプレイヤーが対戦する。

 客はどちらが勝つか予想して賭ける。

 勝ち負けだけだとオッズが低い。

 得点差の予想だとオッズは高くなるらしい。


 対戦するプレイヤーは国お抱えだ。

 八百長がないようにそうなっているが、たぶんあるんだろうな。

 まあそういう物だ。


「くそう。イグナイに賭けたのに。ドジりやがって。逆転負けかよ。ヘボプレイヤーは引っ込め」

「お客様、プレイヤーをやられてはどうですか」


 客がプレイヤーとして誘われる。

 こちらは対戦に賭ける事が出来るのは自分自身だけだ。


 賭け麻雀みたいなものだ。

 プレイヤーが自分自身の勝ちに賭ける。


 マイラは対戦でしこたま儲けた。

 反射神経が伊達じゃないからな。

 わざと何ポイントか取らせて相手を熱くさせたりもしてた。

 やるな。

 たまには負けると更に熱くなるぞとマイラに耳打ちした。


 何か白熱しないな。

 と思ったら、音がないんだ。

 エアホッケーゲームに音がない。

 よし、効果音を入れよう。

 短いBGMのジングルなんかも入れたら更に良いだろう。

 改良とバージョンアップは今後もやっていこう。

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