第63話 第6感と、風邪と、ウイルス除去

「くしゅん」


 俺はマイラのおでこに自分のおでこを重ね合わせた。

 マイラのおでこは火が点いたように熱い。


「はわわ」


 マイラの顔がいっそう赤くなった。


「マイラ、風邪をひいたな」

「そうかも」

「病気が治るまで大人しくしてろよ」


 俺はマイラを一人部屋に残して授業に出た。


「あれっ、今日はマイラが居ないの」


 セレンが俺にそう言って声を掛けてきた。


「マイラは風邪なんだ」

「果物を持ってお見舞いに行かなくちゃね」

「マイラも喜ぶだろう」


 放課後。


「マイラ、調子はどう?」

「怠いし、しんどい」

「セレンがお見舞いに来ると言ってた」

「そう。弱ったところを見せたくないけど、男にあえて弱みを見せるのも」


 マイラが呟いている。

 ドアがノックされた。


「どうぞ」

「マイラの調子はどう」

「まだ熱があるみたいなんだ」

「魔法で治せたらいいのにね」


 それだ。

 考えてみよう。

 まずは風邪を検知する魔法だ。


char sick_sense; /*病気*/

char main(void)

{

 return(sick_sense); /*病気を検知*/

}


 こんなのでどうだ。

 早速、魔法を実行してみた。


 うわっ、菌がうようよだ。

 菌ってこんなにいるものなんだな。

 こんなに居たらどれがマイラの風邪の菌か分からない。


「果物を剥いたわ」

「料理出来るアピール。敵ながら天晴」


 何かマイラが呟いたのが聞こえた。

 魔法の事を考えながらウサギの形に剥かれた果物を食べる。


 待てよ、シックとシックス似てるよな。

 そうなると。


char sixth_sense; /*第六感*/

char main(void)

{

 return(sixth_sense); /*第六感を検知*/

}


 うおぅ、魔法で第六感を再現しちまった。

 なんか、ざわざわするだけでこれで第六感と言えるのか。

 あっ、悪寒がしてきた。

 それに、突き刺さるように痛い。

 幽霊でも居るんじゃないだろうか。


「はっくしょん」


 どうやら俺も風邪をひいたようだ。

 風邪を治す魔法の開発に戻ろう。


extern MAGIC *magic_make(char *material,long material_size,int image); /*魔法作成*/

extern int mclose(MAGIC *mp);

extern void magic_delete(MAGIC *mp);


char virus[1000000]; /*ウィルス百万個*/

void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 mp=magic_make(virus,sizeof(virus),IMAGEUNDEFINED); /*ウィルスを魔法に*/

 magic_delete(mp); /*ウィルス消去*/

 mclose(mp); /*魔法終わり処理*/

}


 よし、出来た。


「【ウイルス除去】。効果がないな」


 百万個では少なすぎたか。

 何回か連続で使えば問題ないよな。


「【ウイルス除去】。【ウイルス除去】。【ウイルス除去】……【ウイルス除去】」


 ふぅ、だいぶ良くなった。

 マイラにも魔法を掛けてやるとするか。


「【ウイルス除去×20】。どうだ、マイラ」

「良くなったみたい」


 マイラのおでこにおでこを重ねる。


「はにゃ、近い」


 マイラが動くので鼻だとか唇とかが当たってしまった。


「ごめん」

「うみゅう」


 顔は赤いが、熱は下がったな。


「何か邪魔しているみたいだから帰るわね」

「おう、また明日な」


 そういえば第六感魔法は成功だったのか、失敗だったのか。

 第六感魔法を発動してみた。

 何やら、暖かくてピンク色の波動が感じられた。

 リラックスしているという事なんだろうか。


「タイトに看病されたかったのに。何でも魔法で解決しちゃうんだから。でも、ありがと」

「どういたしまして」


 第六感は役に立たないな。

 お蔵入りにしておこう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る