第56話 暗殺部隊と、異端と、永遠の愛

「私達の他に姿隠しを使っている人間がいる」

「マイラ、それ本当?」

「ええ、気配を感じるの」


 どれどれ。


「【姿隠し破り】。わっ、本当だ。魔法撃っちゃえ。【警報探知】からの【電撃誘導】」


 電撃が当たり、黒ずくめの死体が現れた。

 こいつらが暗殺部隊か。

 楽勝だな。


 建物の中をくまなく歩いて始末した。

 姿隠し破りの魔法はこんなだ。


#include <stdio.h>

#include <stdlib.h>


void main(void)

{

 system("dir /AH > カニキクカ"); /*姿隠しの神秘魔法名鑑定*/

}


 書庫に行ったら、本棚がずれて、拍手しながら伯爵が現れた。


「姿を現したまえ、タイト君。足音で居るのは分かってる」

「ばれたか」


 俺とマイラは姿を現した。


「うわっ。何だ、二人いたのか。そちらのお嬢さんは予想外だ。足音が全く聞こえなかったよ。殺し屋かね」

「元スリ」


 マイラが短く返答した。


「まあいい。それより君の奮闘は魔法で見せて貰ったよ」

「それで」

「君の本質が理解できたよ。一言で言うなら異端だ。天才ではない。平凡でありながら偉業を成し遂げる。異端という他はない」


 異端か?

 転生というのはイレギュラーなんだろう。

 確かに異端だ。

 羊の中に一頭の転生者という狼が皮を被って潜んでる。

 見た目では区別はつかない。

 接してみなければ異端具合が分からないという事だろう。


 マイラは俺に初めて出会った時に、その異端具合を感じ取ったのかな。

 マイラも少し外れているような人間だから、仲間だと思ったのかもしれない。


「そうだね。異端に映るだろう」

「自覚があるんだね。その異端な所が危険なのか、私にはまだ判断できない。君とは長い付き合いになりそうだ」


「ところで姿隠しだけど、暗殺部隊はどうやって実現してるんだ?」

「噂でいいのなら教えてあげられる。噂では世界との接続を切るらしい。これはイメージ出来る者と出来ない者がいると聞いている」


「そういうイメージなんだ。よく、分かったよ」

「やはり異端だね。世界との接続が何かというのを理解しているとは。百万人に一人ぐらいしか姿隠しは出来ないとの噂だ。魔導師は素質がある者を血眼になって探している」

「じゃあ、すぐに暗殺部隊は再建するのは難しいね」

「そうだね」


「暗殺部隊の生き残りがいるかも知れないから気を付けて」

「分かってるさ」


「マイラ、行こう」

「うん」


 姿隠しを使い、伯爵邸から出て、隣の敷地に向かった。

 隣の敷地に何があるかと言えば墓地だ。

 アルミナのお墓がある。

 来たついでにお墓参りしようと思ったのだ。


 墓に行くと、花束を持ったニオブが立っていた。


「いい所で会った。お前が買った魔石の用途について喋って貰うぞ」

「ふん、目立つ所に出ると、うるさいハエがすぐにたかってくる」


 ニオブはそう言うと魔道具を起動した。

 辺りは霧に包まれる。


「【警報探知】。駄目だ、逃げられた」

「うん、居ない」


 マイラも見失ったようだ。

 ええと霧を晴らすには、風だな。

 風は最弱のイメージだったけど、役に立つ場面もあるんだな。


 風を起こすと霧が晴れて、アルミナの墓前には花束が置かれていた。

 メッセージカードが添えてある。

 永遠の愛をとある。


 ニオブも矛盾しているな。

 永遠なら、バリスタとの婚約はどうなんだ。

 手段の一つとして割り切ったのか。


 貴族なら政略結婚は常套じょうとう手段だしな。


「タイト、来月になったら、ダンスパーティあるの……えっと、それでね」


 マイラにしては珍しく歯切れが悪い。


「何だ。行きたいのか。パートナーとして連れてってやるよ」

「本当! タイト、大好き!」


 大げさな奴だな。

 でも、服を用意しないとな。

 準備にだいぶ時間が掛かりそうだ。

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