第22話 元締めと、魔道具を作る魔道具と、指輪

「するってえとなにかい。魔道具はもっと作れるって訳だ。おい、お前達、席を外しな」


 俺は元スリの元締めの所に顔を出した。


「元締め、今は何かと物騒ですから」

「これから話す話の方が物騒だ。いう通りにしな」

「へい」

「はい」


 護衛が部屋を出て行ったので、俺は話を続ける事にした。


「めんどくさいけど、頑張れば何万と作れるけど。数が必要なのか?」

「好評すぎてこのままだと、敵を沢山作っちまう」

「元締め、スリから足を洗ってぬるくなった? ぶっ殺せば良い」

「マイラ、お前。そんなだと長生きできねえぞ。俺達は殺人鬼じゃねえ。元スリだ」

「私は気にしない」


「マイラの言う方針は、どうしよもなくなったら採用しよう。しかし、そんなに好評なのか」

「ああ、闇商人ばかりじゃなくて、真っ当な商人まで欲しがっている。こっちが堅気じゃないのを見越して、脅しを掛けてくる始末だ」

「うーん、薄利多売に切り換えるのは別に良いけど。国中に行き渡らせるほどの魔道具を、俺が作るのは無理だ」

「どうでぇ、一つ弟子をとってみては。そうすれば弟子が作ってくれるっていう、塩梅あんばいだ」


「それより、もっと良い手がある。魔道具を作る魔道具だ」

「おいおい、あんた。そんな物を作ったら、その魔道具を盗み出そうと戦争になるぜ」

「仕方ない。魔道具は3つだけにしよう。一つは元締めが、もう一つはマイラ、最後の一つは俺が持つ。マイラが内職できれば、俺が学園で勉強している間、マイラの良い稼ぎになる」

「タイト、ありがとう。どんな物でも貰えるのは嬉しい。この世に3つしかないのよね」

「そうだね。3つしか作らない。元締めとマイラを弟子にしたとでも言っておけば、魔道具の存在は秘密になる」


 よし、魔道具を作る魔道具を作ろう。

 こんな呪文でどうだ。


extern MAGIC *magic_tool_init(void);

extern void magic_tool_write(MAGIC *mp,char *spell);

extern int mclose(MAGIC *mp);

void main(void)

{

 MAGIC *mp;

 mp=magic_tool_init();

 magic_tool_write(mp,"extern MAGIC *magic_tool_init(void); extern void magic_tool_write(MAGIC *mp,char *spell); extern int mclose(MAGIC *mp); void main(void){ MAGIC *mp; mp=magic_tool_init(); magic_tool_write(mp,\"ここに呪文を入れる\"); mclose(mp); } ");

 mclose(mp); /*魔法終わり処理*/

}


 呪文を入れ子構造にしてみた。

 入れ子構造というのは親亀の上に子亀が乗ってという感じの構造だ。


 工夫した所は『"』の所を『\"』としている所だ。

 こうする事で文字列扱いになる。

 文字列とはいわゆる文章で『"』で囲まれた所が文章だ


 それで、今回は『"』を4つ使っている訳だが、こうすると2度目の『"』が出たところで途切れてしまうのだ。

 それを回避する為に『\"』を使っている。


 魔道具を作る魔道具は完成した。


「魔道具の魔石を指輪にでも仕立てようか」

「それはいいな」

「駄目! 元締めは腕輪とか首飾りとか別の物にして!」


「おいおい、マイラおめぇ、殺すような目で睨むなよ。分かった。腕輪にするから」

「タイトのも指輪にして」

「こだわりは無いから指輪にするよ」


 魔道具を作る魔道具が完成。

 魔道具作りは簡単になった。

 魔道具を起動するのは無詠唱するより簡単だ。

 宝石店で有物の指輪の台座に魔道具を付けた。


 宝石店から帰って、マイラはせっせと魔道具を作っている。

 時々、マイラは作業を止めると魔道具の3つの指輪をうっとりと眺めている。


「指輪が好きみたいだから、今度もっと良いのを贈るよ」

「これが良いの。この指輪はタイトの役に立っているから、特別な指輪よ」


 まあ、マイラが気に入ってくれているなら、問題はない。

 魔道具だと一秒で一個の魔道具が作れる。

 一日やって2万個ほどの魔道具が作れる計算だ。

 国中で俺達が作った魔道具が使われるのも時間の問題だろう。

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